日々の生活で立ち止まったときに読みたい小説|夢や仕事、再挑戦に寄り添う物語

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 思い描いていたようには、なかなかいかない。

 仕事や勉強で一生懸命に取り組んでも結果が出なかったり、昔の自分と今の自分を比べてしまったり。誰かに相談すればよいとわかっていても、ひとりで抱え込んでしまうこともあると思います。

 そんなとき、私は小説の中の登場人物や、その人たちの生き方から、自分のことを考えるきっかけをもらうことがあります。

 本を読んだからといって、目の前の問題がすぐに解決するわけではありません。また、目の前の問題の具体的な解決方法を本が教えてくれるわけでもありません。

 それでも、何も考えずにただその時を夢中になって過ごした時間まで否定しなくてもよいのかもしれないし、もう少し誰かに頼ってもよいのかもしれない。

 そんなふうに、少しだけ考え方が変えてくれるかもしれない。

 今回は、私が実際に読んだ作品の中から、日々の生活で立ち止まったときに思い出したり、読んで明日からまた頑張ってみようと思えた小説を紹介します。

 今の気持ちに重なる一冊があれば、個別の感想・レビューものぞいていただけると幸いです。

今の気持ちから選ぶ、おすすめの小説

こんな気持ちのときに作品
夢や目標につまずき、自分を見失いそうなとき『夜光貝のひかり』遠藤由実子
「あの頃のほうが輝いていた」と感じるとき『私たちはたしかに光ってたんだ』金子玲介
仕事や悩みをひとりで抱え込んでいるとき『猫を処方いたします。⑥』
石田祥
もう一度学ぶこと、始めることを考えているとき『星の教室』髙田郁

 同じ本でも、読む時期によって心に残るところは変わると思います。ここでは、私自身が読んで受け取ったことを中心に紹介していきます。

①『夜光貝のひかり』|思いどおりにならなくても、自分だけのひかりは残る

夜光貝のひかり (文研じゅべにーる)

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 夢に破れ、何もやる気が起きない夏休みを迎えた少年・彼方。奄美大島で過ごすことになった彼は、記憶をなくした幽霊少女・ルリと出会います。

 少年と少女の、一夏の淡い恋と成長を描いた物語。児童書として刊行されていますが、大人の私にも立ち止まって考えたくなることがたくさんありました。

 特に心に残ったのは、夢に向き合う時間と、磨かれて輝く夜光貝が重なるところです。

 努力しても、望んだ結果になるとは限りません。自分より才能のある人に出会って、頑張ってきたことまで意味がなかったように感じてしまうこともあるでしょう。

 それでも、自分で磨いた夜光貝には、自分だけの輝きがある。

 夢が叶わなかったからといって、好きだった気持ちや、一生懸命に打ち込んだ時間までなくなるわけではない。私はこの物語から、そんなことを感じました。

 ただ、夢や成長だけを描いた明るい物語というわけではありません。戦争や、当たり前の日常が続くことの貴重さにも目を向けたくなる作品です。

 短い物語ですが、急いで読み終えるのはもったいない。奄美の夏を感じながら、ゆっくり読んでほしい一冊です。

こんな方におすすめ

  • 夢や目標につまずいている方
  • ほかの誰かと自分を比べてしまう方
  • 子どもと同じ本を読んで、感想を話してみたい方

▶ 『夜光貝のひかり』の詳しい感想・レビューはこちら

②『私たちはたしかに光ってたんだ』|あの頃の自分を、もう一度見つめたくなる

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 高校時代、仲間とバンドを組み、夢を追いかけていた瑞葉。時が過ぎ、会社員となった彼女は、自分が離れたバンドの紅白初出場を知ります。

 夢中になれるものがあった過去と、そこから離れた現在。その間にある気持ちを考えたくなる青春小説です。

 私が本作を読んで思ったのは、人の輝きは星の光に似ているのかもしれない、ということでした。

 何かに夢中になっているとき、自分が輝いているかどうかなんて、あまり考えないと思います。目の前のことに必死で、悩んだり、周囲とぶつかったりすることもあるでしょう。

 その時間から遠く離れて、初めて「あの頃はよかったな」と気づく。

 けれど、今の自分が輝いていないかどうかも、今はまだわからないのかもしれません。いつか振り返ったとき、今の時間にも大切なものを見つけられるのではないか。私はそんなことも考えました。

 一方で、登場人物には独特の強さや危うさがあり、私は最後まで素直に感情移入できたわけではありません。

 だからこそ、夢を追うことや、そこから離れることの難しさが、生々しく感じられる作品でもありました。

こんな方におすすめ

  • かつて本気で追いかけていた夢がある方
  • 過去の自分と今の自分を比べてしまう方
  • 青春が過ぎたあとの人生を描く物語を読みたい方

▶ 『私たちはたしかに光ってたんだ』の詳しい感想・レビューはこちら

③『猫を処方いたします。⑥』|ひとりで何とかしようとしてしまう人へ

猫を処方いたします。6 (PHP文芸文庫)

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 悩みを抱える人たちに、薬ではなく、本物の猫を処方する「中京こころのびょういん」。

 猫に振り回される人たちの姿を通して、自分の抱えていることにも目を向けたくなる『猫を処方いたします。』シリーズ。その第6巻です。

 今回、私の心に残ったのは、人に頼ること、そして頼ってもよいのだということでした。

 仕事が忙しくても、困っていても、自分で何とかしなければと思ってしまう。頼みたい気持ちはあっても、相手も忙しいだろうし、迷惑ではないかと考えて言い出せない。

 私にも、そういうところがあります。

 頭では誰かに相談したほうがよいとわかっていても、実際に頼るのは難しいものです。そんな気持ちに、物語を通して触れると、少し素直に受け取れる気がしました。

 シリーズ初期のはちゃめちゃな面白さが落ち着いてきたことには、寂しさもあります。それでも今回は、仕事で悩んでいた私自身にも、薬を処方してもらえたように感じた一冊でした。

 なお、第6巻は前巻からの続きになっています。これからシリーズを読む方は、第1巻から手に取ることをおすすめします。

こんな方におすすめ

  • 悩みをひとりで抱え込みやすい方
  • 人に頼ることを申し訳なく感じてしまう方
  • 猫と人との関わりを描く物語が好きな方

▶ 『猫を処方いたします。⑥』の詳しい感想・レビューはこちら

④『星の教室』|もう一度学べることの喜びに気づく

星の教室 (ハルキ文庫 た 19-34)

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 いじめや不登校によって、中学校を卒業できなかったさやか。二十歳の春、彼女は夜間中学校へ入学します。

 そこで出会うのは、戦争や貧しさなど、さまざまな事情から十分に学ぶ機会を得られなかった人たちでした。

 子どものころの私は、学校が休みになるとうれしかったし、授業が終わってゲームをする時間を楽しみにしていました。

 学校へ通うことも、文字を読めることも、当たり前のように受け取っていたと思います。

 けれど本作の生徒たちを見ていると、学べる場所があること、一緒に過ごす仲間がいることが、どれだけうれしいことなのか伝わってきます。

 さやかが抱えてきた傷や、生徒たちが学べなかった事情には胸が痛くなります。それでも、教室で過ごす姿が魅力的で、私は少し羨ましくも感じました。

 何かを始めようとすると、できなかったことや、過ぎてしまった時間に目が向くことがあります。

 そんなとき、これから学べることや、そこで出会える人にも目を向けたくなる。私にとって『星の教室』は、そんな一冊でした。

こんな方におすすめ

  • 学び直しや、新しいことへの挑戦を考えている方
  • 学校との関わりに心残りがある方
  • さまざまな人生を歩んできた人たちの物語を読みたい方

▶ 『星の教室』の詳しい感想・レビューはこちら

今の自分に重なる一冊から

 夢が叶わなかったこと。昔に輝いていたなと思う自分を思い出すこと。人に頼れないこと。もう一度、何かを始めようとすること。

 今回紹介した作品は、それぞれ違う物語ですが、読んでいるうちに、自分の歩いてきた時間や今の暮らしを考えたくなりました。

 登場人物に共感することもあれば、自分とは違うと感じることもあります。それでも、その人たちの姿を眺めていると、自分だけでは思いつかなかった見方に出会えることがあります。

 今の気持ちに重なる作品があれば、その一冊から手に取ってみてください。

 これからも、実際に読んで心に残った作品を、少しずつ追加していきます。

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