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台風や雪で学校が休みになると、嬉しかった。
子どものころを振り返ると、私にはそんな記憶があります。学校で授業を受けるよりも、授業が終わって家に帰って友達とゲームをするほうが楽しみでした。
けれど、『星の教室』を読んで思ったのは、学校へ通えること、文字を読めること、そして学べることのありがたさでした。
さまざまな事情を抱えた人たちが集う夜間中学校。そこで過ごす生徒たちの姿から、これまで学ぶ機会を得られなかった事情や、今こうして学べる喜びが伝わってくる作品です。
学校に通い、卒業し、文字を読めることを当たり前だと思っていた私。その「当たり前」を見つめ直すきっかけをくれた本作を読み終えて、素直に「この本に出会えてよかった」と思いました。
①『星の教室』のあらすじ
いじめや不登校によって、中学校を卒業できなかった潤間さやか。
学校で受けた傷は、その後の生活にも影を落としていました。学歴への引け目や周囲への不信を抱えるさやかは、あるきっかけから夜間中学校の存在を知ります。
そして二十歳の春、河堀夜間中学へ入学することに。
そこに集まっていたのは、戦争や貧しさなど、さまざまな事情で十分に学ぶ機会を得られなかった人たちでした。
年齢も歩んできた人生も異なる仲間たちとの出会いを通じて、さやかの心は少しずつ変わっていきます。
※結末に触れる大きなネタバレは避けて感想を書いています。
②読んだきっかけ|『宙わたる教室』と映画『学校』を思い出して
きっかけは、書店の店頭に並んでいた本作を見かけたことでした。
夜間学校が舞台と知って思い出したのが、伊与原新先生の『宙わたる教室』。そして、小学生のころに映画館で観た、山田洋次監督の『学校』です。
『学校』は、子どもながらにそのテーマの重さなど何もわからずに「面白い映画だな」と感じた作品でした。
私にとって、夜間学校を舞台にした物語には、心に残る作品が多いという印象があります。
タイトル名に星が入っている本作品。
「この本も読んでみたい」
そんな気持ちから購入しました。
③感想・レビュー|夜間中学校の生徒たちから教わったこと
傷つけられた側が、その後も苦しむ理不尽さ
まず心に引っかかったのは、さやかが抱えてきた苦しさでした。
中学校の時にいじめにあい不登校となったさやかですが、いじめた側は、そのまま高校へ進み、大学生活まで楽しんでいるかもしれない。一方、学校へ通えなくなったさやかは、その経験によって進路や働き方まで制限されてしまう。
傷つけられた側が、その後の人生でも苦しさを抱え続けなければならないことに、理不尽さを感じました。
さやかにとって夜間中学校への入学は、勉強をやり直す機会であるとともに、傷ついた学校との関係を結び直す一歩だったのだと思います。
読み書きができることは、当たり前ではない
夜間中学校でさやかが出会うのは、自分よりもずっと年上の生徒たちです。
なかには、学ぶ機会を得られず、文字の読み書きに不自由を抱えたまま暮らしてきた人もいます。
私は映画『学校』もみていたし、前述の『宙わたる教室』も読んではいますが、それでも、普段、文字を読めることや書けることを、特別にありがたいとは考えていませんでした。できて当然とすら思っていたと思います。
本を読む。自分の名前を書く。書かれていることを確かめる。
そうした日常の動作も、何も疑うことなく学ぶ機会があったからこそできることなのだと、本作を通じて気づかされました。
自分にとっての「当たり前」が、誰にとっても同じように与えられているわけではない。
子どものころ、学校に通いたくても通えない子どもたちがいることを、授業で習った記憶があります。けれど本作では、一人ひとりの人生に触れることで、そのことが知識として知っていたときよりも身近に感じられ、胸に残りました。
「学校って、こんなに楽しい場所なんだ」と思えた
本作を読んでいて、特に印象に残ったのが、生徒たちの学校生活です。
私自身の学生時代を思い返すと、授業が休みになれば嬉しかったし、学校が終わってから遊ぶ時間を楽しみにしていました。授業中も新作のゲームの攻略に頭の中は夢中だったり、早く家に帰ってゲームがしたいなと考えていたのは1度や2度じゃなかったです。
学校にいくことが日課みたいなもので
「明日も学校に行きたい」
と待ち遠しく思うことは、あまりなかったように思います。
けれど、本作の生徒たちからは、学校へ通い、仲間と過ごし、学べることへの喜びが伝わってきます。
それぞれに苦労を重ねてきた人たちなのに、教室で見せる姿は明るく、前向きです。
読んでいるうちに、私は「こんな学校生活が少し羨ましい」と感じました。
登場人物たちの苦労を思えば、単純に羨ましいと言ってよいのか迷います。それでも、そう感じるほど、この教室で過ごす時間が魅力的に描かれていました。
④読後に映画『学校』を観たくなった
『星の教室』を読み終えて、久しぶりに映画『学校』を観たくなりました。
小学生のころに感じたよさを、今の自分ならどう受け取るのだろう。そんな気持ちも湧いてきて、さっそくDVDを購入してしまいました。
一冊の本を読んだことで、昔観た映画にも、もう一度出会いたくなる。
私にとって本作は、そんな読後の楽しみまでくれた作品でした。
⑤『星の教室』はこんな方におすすめ
- 夜間中学校を舞台にした物語に興味がある方
- 学ぶことの意味や喜びを、あらためて感じたい方
- さまざまな人生を歩んできた人たちの物語を読みたい方
- 『宙わたる教室』や、映画『学校』が心に残っている方
⑥まとめ|この本に出会えてよかった
『星の教室』は、夜間中学校に集まる人たちを通して、学べることは普通にできることではなく、学べる事の幸福感を登場人物を通じて感じさせてくれる作品でした。
さやかが抱えてきた傷や、生徒たちが十分に学べなかった事情には、胸が痛くなります。
それでも読後に残ったのは、その事情を感じさせない、夜間中学校の教室で過ごす人たちの明るさと、学校へ通う楽しさでした。
文字を読めること。学ぶ場所があること。一緒に過ごせる仲間がいること。
普段は意識せずにいるものへ、目を向けたくなる一冊です。
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