今回は『イライザは救いたい』(藤崎翔)を紹介いたします。
誰かを幸せにしたい。その気持ちはありがたいのですが、自分が考える幸せと、相手が望む幸せが同じとは限りません。
『お梅は呪いたい』シリーズの今回は、イライザがお梅に出会う前の物語。人を救おうと奮闘するイライザですが、その姿を見ていると、ドラマで出てくるようなお見合いを勧める昭和のおばちゃんみたいやな……と思ってしまいました。
善意でぐいぐい世話を焼き、時には、とてつもないアッパーカットまでかましてしまうイライザ。
登場人物たちがよくない方向へ進んでいくことは予想できる。それでも、読み終えて「本当にイライザは救えなかったのだろうか」と考えたくなる一冊でした。
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①あらすじ
昭和のアニメ『ハッピー魔法少女イライザ』のキャラクター人形として作られ倉庫に眠っていたイライザに、魂が宿った。
人々を幸せにしたいと願うイライザは、魔法の力で現代を生きる人たちを救おうと奮闘する。
ところが、生まれた時代の価値観と現代の暮らしには、さまざまなずれが。よかれと思ってしたことが余計なお節介になり、人々は思わぬ方向へ進んでいく。
人を呪いたいお梅とは反対に、人を救いたいイライザ。その善意が騒動を巻き起こす、『お梅は呪いたい』シリーズの一冊。
②読んだきっかけ
『お梅は呪いたい』シリーズの続刊が出ると聞いて、今回も手に取りました。
次はどんな話になるのだろうと思っていたら、まさかのイライザがお梅に出会う前の物語。
シリーズを読んでいるので、前巻でイライザは登場人物たちを不幸な方向へ進めてしまうことはわかっています。それでも、そこに至るまでに何が起きるのか、どんなストーリーになるのかはやはりシリーズ読者としては気になるところ。
お梅とは反対に、人を幸せにしたいはずのイライザ。その善意がどう裏目に出るのか、気になりながら読み始めました。
③感想・レビュー
(1)イライザって、昭和のおばちゃん?
今回読んでいて思ったのは、イライザって昭和のおばちゃんみたいやな、ということでした。
自分がよいと思ったことは、相手にとってもよいはず。そんな調子で、ぐいぐいと自分の良かれと思ったことを実行していきます。
もちろん、本人は相手を幸せにしたいと思っています。ただ、その相手がどうしたいのかよりも、イライザ自身がどうしてあげたいのかが先にでてしまっていて、結局、善意の押し売りみたいになってしまう。
今ではあまり見かけなくなったような、少々強引なお節介ぶりでした。
本人に悪気がないからこそ、なかなか止まらない。救いたいという気持ちは伝わってくるのですが、思い込みが強すぎて…
そして、忘れられないのが、登場人物にかます、とてつもないアッパーカット。
バッタ並みの跳躍力が半端なくて、まさに魔法少女(物理)
これには笑いました
善意のお節介だけでも十分に強烈なのですが、このアッパーカットも含めて、イライザは私の中でもなかなか強烈なお見合いを勧めてくる昭和のおばちゃんというイメージが定着しました。
(2)昭和の「よいこと」が、令和でもよいとは限らない
お梅と同じく、イライザも生まれた時代の価値観で動いています。そのため、令和を生きる若い人たちとは、どうしても考え方がかみ合いません。
イライザにとっては幸せにつながることでも、相手がそれを望んでいるとは限らない。それでも、自分の考える幸せに向かって突き進んでしまいます。
この価値観のずれが、本シリーズでの面白さでもあり、今回の面白いところだと思いました。
昔は当たり前だったことでも、今ではそうではない。さらに、同じ時代を生きていても、何を幸せと感じるかは人によって違います。
イライザを見ていると、「相手のために」と思っている時ほど、その相手の気持ちを置き去りにしてしまうことがあるのかもしれないと感じました。
お梅は呪いたいのに、結果として人を幸せにしてしまう。一方のイライザは、救いたいのに、よくない方向へ導いてしまう。
この正反対の関係が面白く、同じシリーズでも違った味わいがありました。
そして、イライザについては昭和生まれの私でも、イライザの思っていることには共感できる部分もあってそこも今巻ならではの楽しさだと思いました。
(3)結末はある程度読める。それでも、本当に救えなかったのか?
気になったのは、シリーズを読んでいると、登場人物たちがよくない方向へ進むことを、ある程度予想できてしまう点です。
イライザが何かをしようとするたびに、今回も裏目に出るんやろうな……
と思ってしまいます。
もちろん、そういう物語だとわかって読んでいるので、不幸な方向へ進むこと自体は仕方ありません。ただ、最後にどのような方向へ着地するのかが見える分、意外性という点では少し物足りなさもありました。
とはいえ、読み終えて「イライザは誰も救えなかったのか?」とも思います。
確かに、イライザが思い描いたとおりの幸せにはならなかったのかもしれません。しかし、登場人物たちにとっても、すべてが不幸の結末かというとそうでもなかったのかな?と思います。
不幸なことが起きたからといって、そこで何もかもが決まるわけではない。イライザの行動がもたらしたものを、どう受け取るのか。
登場人物たちの行く末を予想しながら読んでいたのに、読み終えると、その「不幸」の意味はイライザ目線での不幸だったと言えるかもしれないなと思うほどには救いのある物語だと思います。
④こんな方にオススメ
- 『お梅は呪いたい』シリーズを読んでいる方
- イライザがお梅に出会う前の物語が気になる方
- 善意のお節介が裏目に出る、ブラックユーモアのある物語が好きな方
- 昭和と令和の価値観のずれを楽しみたい方
シリーズを読んでいると、登場人物たちがよくない方向へ進むことは、ある程度わかってしまいます。
それでも、昭和のおばちゃんのように世話を焼くイライザと、令和を生きる人たちとのすれ違いは、お梅とはまた違った面白さがありました。
そして、強烈なお節介とアッパーカットの先に残ったのは、「本当にイライザは救えなかったのだろうか」という気持ちです。
救いたいという願いは、思ったとおりには届かない。それでも、何かは届いていたのかもしれない。そんなふうに感じた一冊でした。
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