今回は、宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』を紹介します。
読み終えて感じたのは、成瀬あかりは奇抜なだけの主人公ではないということです。自分が興味を持ったことに、驚くほどまっすぐ取り組む。すぐ飽きてしまうところもありつつ、一直線に進んでいくその姿を見ていると、いつの間にか彼女の次の行動が楽しみになっていました。
この記事では、初めて読んだときに感じた成瀬の魅力を、結末のネタバレを避けてお伝えします。
①あらすじ
滋賀県大津市を舞台に、我が道を進む少女・成瀬あかりと、彼女に関わる人々を描いた青春小説です。
閉店を控えた西武大津店に通い続けたり、幼馴染の島崎と漫才に挑戦したり。成瀬の関心は、思いがけない方向へ広がっていきます。
周囲を驚かせながらも、自分の決めたことに取り組む成瀬。彼女の行動を見守るうちに、読者もその存在から目を離せなくなります。
②読んだきっかけ|タイトルと表紙が気になって
出会いは、書店でたまたま見かけたことでした。
『成瀬は天下を取りにいく』という大きなことを言うタイトルと、表紙の女の子が西武ライオンズのユニフォームを着ている姿?その組み合わせが不思議で、どんな物語なのか気になりました。
ただ、その時点では、ラノベかな?という感じで、合うのかな?と思い、正直色物感もあって購入前は戸惑いもありました。
購入の後押しになったのは、作者紹介です。自分と同い年の方のデビュー作だと知り、どんな作品を書くのだろうという興味と、応援したい気持ちが湧きました。
そんな偶然から、私と成瀬あかりとの出会いが始まりました。
③感想・レビュー
(1)冒頭から気になる、成瀬の次の行動
読み始めると、早速、成瀬の独特な宣言に引き込まれます。
島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う
冒頭から不思議な感じで読者にパンチを繰り出してくる成瀬…
最初は、成瀬の変わった行動を楽しむ作品なのかなと思っていましたが、それだけでは終わらないところがよかったです。
(2)成瀬は、火の玉ストレートのような主人公
成瀬の行動は、周囲から見ると突拍子もなく映ることがあります。
けれども、本人は人と違うことを狙っているというより、興味を持ったことを実行している。そのまっすぐさが、私にはとても気持ちよく感じられました。
野球に例えるなら、予想もしない曲がり方をする変化球よりも、来ると分かっていても打てない速球です。かつての阪神タイガースの守護神藤川球児さんの火の玉ストレートを思い浮かべるような、勢いと魅力がありました。
次もきっと驚かされる。それでも、もっと見ていたい。成瀬には、そんな引力があります。
(3)周囲の人物と一緒に、成瀬を見守れる
成瀬の魅力は、彼女を見つめる周囲の人物を通して伝わってきます。
戸惑ったり、感心したり、ときには巻き込まれたり。その反応を読むことで、私も物語の中の人たちと近い位置から成瀬を眺めているように感じました。
強烈な存在感がある一方で、成瀬にも少女らしい一面があります。その表情が見えることで、ただ何でもできる人物としてではなく、一人の女の子として親しみを感じられました。
④気になったところ|成瀬の個性を楽しめるか
読む前に気になっていたのは、個性的な主人公の行動だけで物語が進むのではないか、という点でした。
私の場合は、周囲の人物との関係や、成瀬の人間らしい一面が見えることで、その心配は薄れていきました。
ただ、主人公に自分を重ねながら読む方は、成瀬との距離を感じるかもしれません。まずは島崎たちと一緒に、彼女の行動を見守るつもりで読むと、入りやすいと思います。
また、読む人によっては、某ライトノベルで人気アニメにもなったあの涼宮ハ〇ヒを思い浮かべるかもしれません。現に私もはじめはそっち系のキャラ?とも思ったし、構図もハル〇に巻き込まれる主人公キョンっていう感じもなきにしもあらずだなと。
ただ、読んでいて別作品だなと思うのですが、思い浮かべる人も中にはいるだろうなぁと思いました。
⑤こんな方におすすめ
- 忘れられないニュータイプヒロインに出会いたい方
- 行動力のある登場人物から元気をもらいたい方
- 青春小説や、友人同士の関係を描いた物語が好きな方
- 成瀬シリーズを最初から読んでみたい方
⑥読み終えて|成瀬の次の挑戦も見ていたい
書店で見かけたときは、少し身構えていた作品でした。
それが読み終わる頃には、成瀬が次に何をするのか、もっと知りたくなっていました。若さと行動力に満ちた姿を見ていると、自分にもまだ何かできることがあるのではないかと思えてきます。
成瀬のまっすぐさを、ぜひ味わってみてください。
関連レビュー|再読や続編の感想はこちら
初読後、文庫版でも再読しました。読み返して気づいた、成瀬と周囲の人物との関係については、こちらにまとめています。
成瀬のその後が気になった方には、続編もおすすめです。


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