『成瀬は信じた道をいく』を読み終えて、頭に浮かんだのは「火の玉ストレート」という言葉でした。
自分が興味を持ったこと、やってみたいと思ったことに、まっすぐ向かっていく成瀬あかり。その姿は前作と変わらないのに、関わる人が増えることで、彼女はますます自由になり、彼女の魅力がさらに増す。
『成瀬は天下を取りにいく』で成瀬のファンになった方には、ぜひ読んでほしいシリーズ第2弾です。
※この記事では、物語の結末に関わるネタバレを避けて紹介しています。
①あらすじ
滋賀県大津市を舞台に、わが道を進む成瀬あかりと、彼女に関わる人々を描く連作短編集です。
「ゼゼカラ」に憧れる小学生、娘の受験を見守る父親、近所の主婦、観光大使を目指してきた女子大生。それぞれの人生が成瀬と交わり、新たな物語が生まれていきます。
高校から大学へと歩みを進める成瀬は、周囲の人たちの目にどのように映るのか。前作とはまた違った角度から、成瀬の魅力マシマシ感を楽しめる一冊です。
②読んだきっかけ
前作『成瀬は天下を取りにいく』を読んで、面白かったなと思った私。
私と同い年の作家さんがデビューして、成瀬は本屋大賞をとりにいくを地でいっていた頃に発売された本巻。
実はこの時はまだ、面白い系ヒロインが誕生した程度で成瀬中毒には程遠いくらいにの「成瀬、面白い子で純粋な子よね?」程度にしか思っていなかった私は、初刊も初版で手に入れたので、人気作の続編も初版で読んで作者を応援しようという気持ちで購入。
まさかこの時、初刊以上に成瀬にはまることになるとは思いもせず…
③感想・レビュー
成瀬の魅力は「ストレートという名の魔球」
成瀬は、世間一般の感覚でいえば、少し変わった人なのだというのは、天下をとりにいくからは誰もが認めるところだと思います。
けれど、本人が奇抜なことをして目立とうとしているわけではありません。興味を持ったことや、やりたいと思ったことに、そのまま取り組んでいるだけです。
そのまっすぐさが、周囲の人には予想外の行動に見える。だからこそ、成瀬の言動は面白く、目が離せなくなるのだと思います。
変化球を投げているつもりはないのに、受け取る側からすると驚かされる。まさに「ストレートという名の魔球」というのが初刊からの感想だったのですが…
その魔球のキレが関わっていく人が増えるごとに増していく感覚。
成瀬と関われば関わるほどに成瀬が認められ、成瀬の世界はより広くなっていく。
本作で初めて思いました。
成瀬さん、ホンマに令和のニュータイプヒロインですわ
周囲の人の目線を通すから、成瀬をもっと知りたくなる
このシリーズで面白いと感じるのは、成瀬自身の説明だけで彼女を知るのではなく、周囲の人たちの目線を通して、その魅力に触れられるところです。
成瀬に憧れる人もいれば、戸惑う人もいる。関わり方が違えば、見えてくる成瀬の姿も変わります。
読者もその人たちと同じ場所に立って、「成瀬って、こういうところがあるんだ」と発見していく。その距離感が心地よく感じられました。
成瀬本人はいつもどおりでも、見る人が変わることで、新しい魅力が伝わってくる。そして、そのかかわった人物も何かに気が付き良い方向に向かっていく。
その感じがとても楽しく読める作品だと思います。
成瀬が認められると、娘のことのようにうれしい
読み進めるうちに、不思議と成瀬を見守るような気持ちになっていました。
成瀬の良さが周囲に伝わり、認められていく。それが、まるで自分の娘を褒めてもらったようにうれしいのです。
前作から成瀬を知っているぶん、「そうそう、成瀬はこういう人なんです」と言いたくなる感覚もあります。
本人は誰かに認めてもらうために行動しているわけではない。それでも、その姿が人の心に残っていくところに、爽快感がありました。
滋賀への愛着も、このシリーズの楽しみ
成瀬の魅力とともに印象に残るのが、物語から伝わってくる滋賀への愛着です。
成瀬が暮らし、行動する場所として描かれる膳所駅前のときめき坂等々、街そのものにも親しみが湧いてきます。
成瀬のことをもっと知りたくなるのと同時に、彼女が暮らす街も気になってくる。この土地との結びつきも、シリーズを好きになる理由のひとつです。
④前作から読んだほうがいい?
個人的には、『成瀬は天下を取りにいく』から読むのがおすすめです。
前作で成瀬の人柄や周囲との関係を知っていると、本作で出会う人々の反応を、より楽しく受け止められると思います。
「今度はどんなことをするのだろう」という期待と、「やっぱり成瀬だな」という安心感。その両方を味わえる続編でした。
⑤こんな人におすすめ
- 『成瀬は天下を取りにいく』が好きだった方
- 成瀬あかりの活躍を、もっと読んでみたい方
- 個性的な主人公と、周囲の人々の関わりを楽しみたい方
- まっすぐ行動する人の姿に元気をもらいたい方
- 滋賀・大津を舞台にした小説を読みたい方
『成瀬は信じた道をいく』は、前作で好きになった成瀬の魅力を、いろいろな人の目線からさらに楽しめる作品
成瀬の興味を持ったことに、まっすぐ向かっていく。その姿に驚かされ、笑わされ、いつの間にか応援したくなります。
前作で成瀬のファンになった方なら、本作を読んで、ますます彼女を好きになるのではないでしょうか。
成瀬ガチ勢の方には、ぜひ読んでほしい一冊です。
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