綺麗な思い出は綺麗なままの方が良いんだろうなぁ…【流星と吐き気】(金子玲介)の感想・レビュー

本ページはアフィリエイト広告を利用しております。

①あらすじ

 登場人物は皆、身勝手でクズ。でも、そこに人間の本質があるーー。

・偶然の再会を「運命」と勘違いして、安全圏から告白をしようとするアーティスト。――流星と吐き気

・アニメにもなった作品の主人公のモデルは自分? サイン会で作者が元カレか確かめる高校教師。――リビングデッドの呼び声

・担当編集者に振られたにもかかわらず、才能は認められていて作品だけで繫がっている人気漫画家。――種

・昔付き合っていた彼女から独り言のようなLINEが送られてきて、死を仄めかされた編集者。――消えない

・かつて旅行先で意気投合した男性が偶然お客さんとなり舞い上がるレンタル彼女。――プラネリウム

仄暗い気持ちが過去を呼び戻してしまう5人の物語。
※Amazonの商品レビューより抜粋しております

②読んだきっかけ

 『死んだ山田と教室』以来、作者の本は発売するたびに購入している私。

 『死んだ木村を上演』が個人的にはもう一つだったかな?と思いながらも、『死んだ山田と教室』以来追いかけようという気持ちはあったので、発売と聞き読み始めました。

 タイトルを読んだ時は、死んだ〇〇じゃないのかと思いつつ、恋愛に関する短編集?

 また、今までとは違う斜め上のジャンルがきたなと思いましたが、「嫌愛」という帯をみて、ちょっとワクワクしながら読みました。

③感想・レビュー

 今も気持ちの残っている昔別れたという元カレ、元カノに偶然会って思いを伝えたり、確かめたりする5人の短編集なのですが、高校の時に2ヶ月付き合って今でも忘れられない元カノと偶然に再会して今の想いを伝えるという第1話目に始まり、第2話目はその想いを伝えられた元カノがその元カレの想いを確かめに行くなど、前話の元カレ、元カノが話の主人公になって繋がっていくお話。

 読んでいて、めちゃくちゃ痛いというのが率直な感想。

 付き合っていた頃の思い出なのですが、大体別れた頃っていうのは傷になるほど痛いはずなのに、時間が経つと不思議と痛みよりも良い思い出だけを思い出せるようになるもの。

 そして、あの頃付き合っていた相手のことを思い出すと、こんな風に思うかもしれない。

 俺は(私は)、まだあの頃付き合っていた相手のことを好きかもしれない。

 そして、今も、相手からは嫌われていないはずだ


 と。

 それがあるからなのか、古傷という名の「傷」なはずなのに、抉られにいくどころか、新たに大けがしてるんじゃないか?というくらいに痛々しいなと感じました。

 そして、各章の主人公たちがそれぞれに元カレ、元カノたちの傷を抉る抉る、なんなら、嫌悪感すら示すのに、次章ではその嫌悪感すら抱いた気持ち悪いことを平気で自らする。

 自分の相手への想いは純粋で綺麗なのだと疑いもせずに。

 ただ、本作品を読んでいて、登場人物たちの滑稽さを笑ったりもできるのですが、じゃあ、私はどうなのよ?となると、意外と登場人物たちのことを笑えないなと思う作品でもあります。

 自分の過去の恋愛を思い出してみても、確かに嫌な思い出って特にないし、自分が恋した異性が幸せであってほしいなとも思うし、一方で、まだパートナーのいない独身であってほしいなという身勝手な希望を抱くときすらあります。

 そして、私が向けていた好意がいまでは恋とは別のものだとわかっていても、私が好意がある以上、相手もそんなに嫌ってないんじゃないか?と本作品を読みながらふと思いました。

 こうなると、もう、本作品の登場人物と私は同じだなと思いましたので、ああ、私もしっぺ返しがないように気をつけようと思いました。

 あの頃の恋は綺麗なもので今思えば一瞬のもの、でも、相手にその綺麗だった頃を今も共有してもらえるかというのは別で、本当に気持ち悪いかもしれない。

 まさにタイトルの通り、「流星と吐き気」な恋のお話だなと思いました。

④こんな方にオススメ

・別れた彼氏、彼女を今でも思っている方
・あの頃の恋は美しかったなと思いを馳せている方
・綺麗なものは綺麗なままである方が良いと実感してみたい方

↓以下のリンクより購入できます。

流星と吐き気

新品価格
¥1,881から
(2025/6/9 19:29時点)

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です