今回は、砥上裕將さんの『ミサゴの守る町』を紹介します。
前作『龍の守る町』に続き、瑞乃町を守る消防士たちを描いた物語です。
前作は、この巻のプロローグに過ぎなかったのではないか?
そう思うほどに、瑞乃町には次々と災害や試練が押し寄せてきます。そして、その危険に、一人でも多くの命を救おうと立ち向かう人たちがいる。
消防士たちの姿に圧倒されながら、119番の向こう側にいる人たちと、自分が大きな被害に遭わず暮らしてきた幸運について考えた一冊でした。
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①あらすじ
5年前の水害で、大切な人を救えなかったことが心の傷となり、水への恐怖を抱えるようになった秋月隊長。
救助の現場を離れ、指令室へ異動した秋月隊長は、これまでとは異なる業務に苦戦しながらも、優秀な部下たちに支えられ、日々の仕事に向き合っていました。
そんなある日、再び龍が牙を剥くかのように、瑞乃町へ災害が忍び寄ってきます。
一人でも多くの人を助けるために奮闘する秋月隊長。いや、秋月隊長だけではありません。
町を守ろうとする瑞乃消防署の人たちと、押し寄せる災害との戦いを描いた物語です。
②読んだきっかけ
きっかけは、書店で本作を見つけたことでした。
あれ?砥上先生の新作?
と思ってみたタイトルが『ミサゴの守る町』?
前作の消防士の話の続き?
『龍の守る町』の続編が、まさか出るとは……。
実は、前作で続きは出ないのではないかと勝手に思っていた本作品。
また秋月隊長たちの物語が読めるのか、と驚きながら手に取って一直線でレジに向かった私でございました。
③感想・レビュー
(1)『龍の守る町』は、まだ始まりに過ぎなかったのか
前作を読んだときにも、消防士という仕事の厳しさや、命を救うことの重さを感じました。
ところが、本作を読んでいると、『龍の守る町』は1冊丸々がこの巻のプロローグに過ぎなかったのではないかと思えてきます。
それほどまでに、押し寄せてくる災害。
自然がもたらすものもあれば、人に原因があるものもある。登場人物だけでなく、瑞乃町そのものに、次々と試練が与えられているように感じました。
この町にまだ安らぎは訪れないのか…
そう思いながらも、その状況に秋月隊長たちがどう立ち向かうのかが気になり、読み進めてしまいます。
秋月隊長を中心に読み始めた物語でしたが、読み終えて振り返ると、町を守る瑞乃消防署の人たち全体の物語として心に残りました。
(2)ヒーローは、ピンチのときにやってくる
「ヒーローはピンチのときにやってくる」
本作を読みながら、そんな言葉が浮かびました。
110番や119番の向こう側には、誰かが危険な状況に置かれたとき、助けるために動いてくれる人たちがいます。
普段の生活では、その存在を強く意識することはあまりありません。それでも、いざというときには、電話の向こうにいる人を頼りにする。
考えてみると、すごいことだと思います。
そして、その人たちは、危険な状況で一人でも多くの命を救えるよう、日々準備をして過ごしている。
私たちが何事もなく暮らしている間にも、いつ訪れるかわからない誰かの危険に備えている。
災害に立ち向かう姿を読んでいるうちに、その場での活躍だけでなく、そこへ至るまでの日々にも思いが向きました。
前巻に続き、頭が下がる思いです。私には、やはりヒーローのような存在に感じられました。
(3)指令室にも、命を救うための戦いがある
秋月隊長は、救助の現場を離れ、指令室で働いています。
現場に出て、直接人を助ける消防士。その姿に比べると、指令室の仕事を「裏方」と捉えてしまうところが、私にもありました。
けれど、119番に電話をかけた人が最初につながるのは、その指令室です。
助けを求める声を受け止め、現場で活動する人たちへつないでいく。その仕事もまた、人の命に関わっています。
慣れない業務に苦戦する秋月隊長と、それを支える優秀な部下たち。
その姿を通して、現場に出る人たちだけでは見えてこない、消防の仕事にどれ一つ無駄な仕事はないのだなと思いました。
助けを求める人のもとへ向かう人がいる。そして、その救助につなげるために働く人がいる。
それぞれが持ち場で力を尽くす姿も、本作で心に残ったところです。
(4)助けを必要とせずに暮らしてきたのは幸運なことだと知る
私自身、これまでに救急車を呼んだことは2回あります。
一方で、火災や水害の現場から、消防士に救助してもらった経験はありません。
地震や台風で怖い思いをしたことはありますが、幸い、大きな被害を受けずに暮らしてきました。
本作を読んでいると、そのことが、これまでとは少し違って見えてきます。
消防士に救助してもらうような危険な状況に置かれなかった。それは、私が幸運に恵まれてきたということなのだと思います。
普段は、火事や洪水のニュースを見ても、自分の暮らしと重ねて考える機会は多くありません。
けれど、本作では、なんとか災害から立ち直ってほしいなと思う瑞乃町に災害が迫り、そこで暮らす人たちの命が危険にさらされる。そして、主人公である秋月隊長達がその場所へ危険を顧みずに助けに向かう。
自分には経験のない状況を物語の中でたどりながら、消防士という仕事の厳しさと、その人たちに支えられている日常を、改めて意識しながら夢中に読める。
まさに、圧倒的な読書体験を得た作品だったなと思います。
④こんな方におすすめ
- 『龍の守る町』を読んで、秋月隊長たちのその後が気になっている方
- 消防士や指令室の仕事を描いた小説を読みたい方
- 災害に立ち向かう人たちの姿を通して、命を救う仕事について考えたい方
- 仲間と力を合わせ、町を守ろうとする物語が好きな方
危険なときに、助けに来てくれる人がいる。
そのことを知っていても、助けを必要とせずに暮らしていると、普段はなかなか意識しないものだと思います。
『ミサゴの守る町』は、そんな私に、119番の向こう側にいる人たちの姿を見せてくれました。
押し寄せる災害に圧倒されるとともに、今日もどこかで、誰かを助けるために備えている人たちへ、頭が下がる一冊でした。
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