【殺し屋の出世術】(野宮有)の感想・レビュー|絶対何か仕掛けていると思いながら、鳥井の逆転を楽しむ営業ミステリー

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 今回は『殺し屋の出世術』を紹介いたします。

 前作の『殺し屋の営業術』が面白かったので、今回も手に取りました。

 表の世界でトップ営業マンだった鳥井が、営業術を駆使して裏の世界を生き抜く本シリーズ。今回も鳥井が生存を賭けて出世争いへ挑むことになります。

 営業マンとして優秀でも、管理職の経験はない。そんな鳥井が前作同様に窮地に立たされるわけですが、前作を読んだからか、私としては、心配するよりも先に思ってしまいます。

 コイツ、絶対何か仕掛けてるな

 と。

 何かあるとはわかっている。それでも騙され、最後には爽快感が残る。今回も、鳥井がどうやって理不尽な状況をひっくり返すのかを楽しめる一冊でした。

殺し屋の出世術

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①あらすじ

 表の世界でトップ営業マンだった鳥井は、極東コンサルティングの裏稼業の仲間たちとともに、営業術を駆使して裏の世界を生き抜いています。

 そんな鳥井が今回、「生きるため」に挑まなければならなくなったのは、出世争い。

 営業マンというプレイヤーとして実績を重ねてきた一方、管理職の経験はない鳥井。これまでとは異なる資質を問われる状況で、この窮地をどう切り抜けるのか。

 闇の世界で、鳥井の資質が試されます。

②読んだきっかけ

 前作の『殺し屋の営業術』の続編が出ると聞いて。

 主人公鳥井は独特のキャラクターで、これが超が付くほどの営業の怪物。ただし、それ以外の能力は凡人ですし、裏社会に後ろ盾があるわけでもない。

 営業術を使って裏の世界を生き抜く鳥井さんが、生きのびた前作から、今度は裏社会の出来レースの出世争いに挑む。前作を楽しめた分、今回はどんな手を見せてくれるのか、期待しながら読み始めました。

③感想・レビュー

(1)鳥井さん、大丈夫?よりも「コイツ、絶対何か仕掛けてるな」

 前作を読んでいることもあり、今回は鳥井が窮地に追い込まれても、素直に心配する読み方にはなりませんでした。

 むしろ、追い込まれれば追い込まれるほど、

 コイツ、絶対何か仕掛けてるな。

 と思ってしまう(笑)。

 「ここから何をひっくり返してくれるのか?」、「ここに何を仕掛けているのか?」と、どんでん返しを期待して読むタイプの作品になったなと感じました。

 ただ、何か仕掛けているはずだと思っていても、その中身までわかるわけではありません。

 鳥井さんにとっての誤算もありますし、すべてが計算どおりに進むわけでもない。どこまでが仕掛けで、どこからが本当のピンチなのか。その境目を考えながら読むのが面白かったです。

 何かあるのはわかっている。それなのに、読み終えると、ちゃんと騙された気持ちになる。不思議な営業ミステリーだなと思います。

(2)堅気の営業マンが、闇の世界では異常な存在になる

 前作も含め、本作の面白さはどこにあるのだろうと考えると、堅気であるはずの鳥井が、闇の世界では異常な存在になっているところが、ひとつあると思います。

 裏稼業の人間たちには、その世界のルールがあります。相手はそのルールに従って、鳥井と対峙する。

 ところが、鳥井は営業マンとして培ってきた考え方や手法で、それを乗り越えてしまいます。

 表の世界からやってきた営業マンなのに、闇の世界の住人にとっても予想のつかない相手になっている。この関係が面白い。

 そして今回は、そんな鳥井さんが始まる前から負け確定の出世争いに挑みます。

 営業マンとして優秀であることと、管理職として力を発揮できることは、同じではありません。プレイヤーとして生きてきた鳥井が、これまでとは違う資質を問われたとき、絶体絶命のピンチをどう切り抜けるのか。

 前作で鳥井の強さを知ったからこそ、今回の課題にも興味を引かれました。

(3)強大な理不尽を撃退する爽快感。ある意味、無敵の主人公

 もうひとつの面白さは、単純に爽快なところです。

 劣勢であるはずの鳥井たちが、強大な理不尽を撃退する。その展開が、やはり気持ちよいです。

 鳥井さんなら何とかしてくれる、鳥井さんだから絶対に対策しているだろうと思いながら読んでいても、途中にはピンチらしいピンチがあります。鳥井さんに誤算もあれば、どう切り抜けるのか気になる場面もある。

 それらをどう乗り越えていくのか。今回も、そこを楽しみながら読み進められました。

 窮地に追い込まれるほど、読者が逆転を期待してしまうと思うのですが、それでも、その期待だけで展開が読めてしまうわけではない。

あくまでわかるのは

 鳥井さんなら絶対に何とかしてくれる

 という、某スラムダンクの仙道さんくらいの絶対的な信頼のみ。

 作者も、ある意味、無敵のダーク主人公を手に入れたなと感じる巻でした。

④こんな方にオススメ

  • 前作『殺し屋の営業術』を楽しんだ方
  • 駆け引きや仕掛けのあるミステリーが好きな方
  • 劣勢から理不尽をひっくり返す展開を楽しみたい方
  • 営業マンとしての能力が、裏の世界でどう通用するのか気になる方

 今回は、鳥井の身を心配するというよりも、「何を仕掛けているのか」を期待しながら読む一冊でした。

 それでも、誤算と仕掛けの境目は簡単には見抜けず、わかっていても騙された気持ちになる。そして、強大な理不尽を撃退する展開には、しっかり爽快感がありました。

 営業マンとして生きてきた鳥井が、「生きるため」の出世争いをどう切り抜けるのか。

 前作を楽しんだ方には、今回の鳥井の働きぶりも、ぜひ見届けてほしいと思います。

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