今回は、『白色光の影を浚う』(遠坂八重)を紹介します。
本作は、学内便利屋「たこ糸研究会」の滝蓮司と卯月麗一が、引きこもりの友人に関する奇妙な相談を受けるところから始まるミステリーです。
部屋にいる友人が、別人に入れ替わっているのではないか。
そんな不可解な相談が、過去の交通事故と、それに関わる人々の記憶へとつながっていきます。
本作で印象に残ったのは、登場人物たちが罪悪感と向き合う姿でした。
そして、遠坂先生の作品らしい、奇妙な登場人物が奇妙な言動をするのも印象的です。
この人はどこかおかしいのではないかと感じると、その違和感に沿うように行動してくれる。その意味でも、期待を裏切らない作品でした。
※この記事では、物語の核心や結末に触れるネタバレを避けて感想をまとめています。
![]() | 新品価格 |
①あらすじ
鎌倉の冬汪高校に通う滝蓮司と卯月麗一は、学内便利屋「たこ糸研究会」として活動している。
ある日、二人のもとに一年生の曽我朝美が相談に訪れる。
長年、部屋に引きこもる幼馴染の新藤文乃を訪ねてきた朝美。しかし、最近聞こえた生活音や、ドア越しに渡されたメモの筆跡に、いつもとは違うものを感じていた。
部屋の中にいるのは、本当に文乃なのか。
調査を始めた二人は、文乃が六年前の交通事故で妹を亡くしていたことを知る。そして、その事故には麗一の父親も関わっていた。
友人への違和感を入り口に、過去の事故と、それぞれが抱えてきた思い(影)が光に照らされ浮かび上がっていく物語。
②読んだきっかけ
遠坂八重先生の作品が好きで、書店の店頭で見つけて購入した本作。
「たこ糸研究会」シリーズの新作ということで、今回も読んでみたいと思いました。
遠坂先生の作品には、どこか奇妙で、簡単には理解できない登場人物が出てくる印象があって、今回はどんな奇妙な登場人物が奇妙なことをやる。
今回も、そんな人物たちがどのような物語を見せてくれるのかを楽しみに読み始めました。
③感想・レビュー
(1)謎の向こうにある、罪悪感と向き合う姿
本作で最も心に残ったのは、登場人物たちが罪悪感と向き合う姿です。
物語の入り口には、引きこもりの友人が別人に入れ替わっているのではないかという、奇妙な謎があります。
その相談だけでも、部屋の中で何が起きているのか気になります。
ただ、読み進めていくと、関心は謎の答えだけではなく、その背後にいる人たちが何を抱えているのかにも向かっていきました。
過去に起きたことを、今どのように受け止めているのか。
その記憶が、現在の言葉や行動にどう影響しているのか。
そうしたところが気になる物語でした。
出来事の真相を知ることと、その出来事に関わる気持ちを整理することは、同じではありません。
何が起きたのかわかっても、それだけで自分の中の後悔や罪悪感が消えるとは限らない。その難しさを考えさせられます。
本作は、謎を追いかけながら、過去を抱えて生きている人たちにも目を向けたくなる作品でした。
(2)奇妙な人物が、違和感どおりに行動してくれる
遠坂先生の作品を読む楽しみの一つが、奇妙な登場人物たちです。
本作でも、言葉や振る舞いを見ていて、何かひっかる冒頭でした。
普通ならそうは言わないのではないか。
そこまでしてしまうのか。
そう感じる場面があるのですが、その人物は、こちらが覚えた違和感に沿うように行動してくれます。
「やっぱり、この人はそういうことをする人なのか」と思わせてくれる。その意味で、期待を裏切らないところがよかったです。
奇妙な人物として登場しても、その後は思ったより普通に振る舞う作品もあります。
しかし、遠坂先生の作品では、最初に感じたおかしさが、その人物の言動として続いていく。今回も、私はその持ち味を楽しめませていただいたなと思いました。
人物を理解できたという安心感よりも、理解しきれないまま、その先を見たくなる感覚があります。
共感できるかどうかとは別に、目が離せない。
登場人物の言葉や行動そのものが、読み進める理由になるところが、本作の魅力でした。
(3)人への違和感と、罪悪感のテーマが重なる面白さ
今回よかったのは、登場人物の奇妙さを楽しみながら、罪悪感というテーマについても考えられるところです。
ある人物の言動に違和感を覚えると、何を考えているのか、何を隠しているのか(意図しているのかしてないのかは別として)が気になります。
けれども、その行動を見ているだけでは、内側にある気持ちまで簡単にはわかりません。
不自然に見える言葉や行動の背後には、どのような思いがあるのか。
本作では、その点を意識しながら読みました。
もちろん、事情があれば、どのような行動でも受け入れられるというわけではありません。
それでも、その人が何を抱えているのかを知ることで、最初に感じた違和感について、もう少し考えてみたくなります。
奇妙な人だと感じることと、その人の苦しさを考えることが、同じ物語の中にある。
そこが印象に残りました。
遠坂先生らしい人物の描き方を楽しみつつ、謎の答えだけでは割り切れない感情にも目を向けられる一冊だったと思います。
ただ、たこ糸研究会シリーズを既読だと奇妙な行動や違和感の謎部分は割と簡単に解けるのではないかと思ったので、ゴリゴリの謎解きミステリーが読みたいという方には物足りないかもしれないと思いました。
④こんな方にオススメ
- 遠坂八重先生の作品が好きな方
- 「たこ糸研究会」シリーズを読んできた方
- 奇妙な登場人物や、不穏な言動が気になる方
- 人物の心理に関わるミステリーが好きな方
- 罪悪感や後悔と向き合う物語を読みたい方
- 謎の答えだけでなく、登場人物の気持ちも考えたい方
『白色光の影を浚う』は、奇妙な相談から始まり、過去の事故と人々が抱える思いへとつながっていくミステリーでした。
特に心に残ったのは、罪悪感と向き合う姿です。
そして、遠坂先生の作品らしく、登場人物がこちらの感じた違和感どおりに奇妙な行動をしてくれるところも、期待を裏切りませんでした。
共感できる人物ばかりではなくても、その人が何を考え、次にどう動くのかが気になる。
そんな人物の面白さと、過去を抱えて生きることの難しさを味わいたい方に読んでほしい一冊です。
↓【白色光の影を浚う】をチェックする
![]() | 新品価格 |



コメントを残す