今回は『呪祖の島』を紹介いたします。
書店で遠坂八重先生の新刊が発売されていることを知り、手に取った一冊です。
曰く付きの離島の高校、過去の惨殺事件、女教師の死。そして、幽霊に過去の出来事を見せられるという特殊能力をもつ主人公。
こうして並べると、オカルトミステリーということになるのでしょうか。
ただ、読み始めると、登場人物も、起きる出来事も、何もかもが奇妙です。
誰一人として、まともな人がいないんじゃないか……。
何を信じればよいのか分からず、終始ドラクエのメダパニの呪文を唱えられているような読書体験でした。
気持ち悪い。疑わしい。読んでいるこちらまで、頭がおかしくなりそうになる。
それでも、最後に辿り着いたところには、読む価値があったと思える一冊です。今回は、この奇妙な読み心地を、ネタバレを控えながら紹介します。
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①あらすじ
姉の異動を実現させるため、姉が勤める会社の社長の故郷にある、離島の高校への転校を頼まれた夏目秀。
その転校先は、昭和20年代に10人が惨殺される事件が起きた、曰く付きの高校でした。
幽霊に過去の出来事を見せられるという特殊能力をもつ秀は、同じく転校を頼まれた久世とともに、5年前に亡くなった女教師の死の真相を探ることになります。
やがて、島の闇に巻き込まれていく2人。一方、異動がかなった秀の姉も、奇妙な出来事に巻き込まれていきます。
島で起きていることと、島の外で起きていることは、どのようにつながるのか。そして、昭和20年代の惨殺事件との関係は。
奇妙な登場人物たちが織りなす、奇妙な状況の連鎖。その先にある真相を追う物語です。
②読んだきっかけ
書店で、遠坂八重先生の新刊が発売されていることを知ったのがきっかけです。
デビュー以来読み続けている遠坂先生の作品。
タコ糸研究会シリーズ3冊に、その他単行本2冊(だと思う)を読み続けているので、新刊が出たら読むという脊髄反射みたいなことをしているので、
新刊でたのか。読まなければならない!!
という謎の使命感のもと購入。
島で起きた惨殺事件?というのがどうも起こる?起こったらしい?という帯。
呪祖って書いてるから、何らかの呪われた○○系の話なのか?と思いながら購入して読みました。
③感想・レビュー
(1)誰一人として、まともに見えない登場人物たち
まず、この作品を読んでいて感じたのは、
誰一人として、まともな登場人物がいない。
ということです。
もちろん、これは読んでいる私の印象ですが、誰を見ても、どこかがおかしい。主人公、主人公の姉、その他もろもろ主人公が出会う人々…言動や反応が気になり、安心して信じられる相手が見つかりません。
登場人物が奇妙なうえに、起きる現象まで奇妙です。
ただでさえ、過去に惨殺事件が起きた離島の高校という、落ち着かない舞台。その中で過去の惨殺事件を調べていたらしい女教師の死の真相を調べることになるわけですが、素直に目の前の出来事を受け止めてよいのかさえ、分からなくなってきます。
何かがおかしいのは分かる
でも、何がおかしいのかを考え始めると、今度は別のことまで疑わしくなる。
そんなふうに、終始疑心暗鬼になりながら読み進めました。
(2)終始メダパニを唱えられているような読書体験
本作の読み心地をたとえるなら、私としてはこれです。
終始、メダパニの呪文を唱えられている感じ。
メダパニは、ドラクエに登場する、相手を混乱させる呪文です。
この魔法を作品から延々とかけられ続けているような感覚です。
また、これが、この魔法をかけられているなとわかるのですが、読んでいる私がその魔法を食らってるのかうまくかわせたのかまったくわからないという…
それくらい、登場人物も状況も奇妙すぎる上にそれがずっと続くという感覚になるので、何をどう受け止めればよいのか、この受け止め方は合っているのだろうか?など、こちらの頭が混乱してきます。
島で起きていることだけでも十分におかしいのに、島の外にいる秀の姉の側でも、奇妙なことが起きている。
これらがどうつながるのか。過去の事件は、今の出来事にどう関係しているのか。
考えながら読んでいるはずなのに、考えるほど騙されているような、騙されていないような不思議な感覚が終始続く。
この気持ち悪さと混乱は、かなり印象に残っています。
そして、読み終えると、自分にメダパニが効いていたのか、効いていなかったのかが分かる。詳しくは書けませんが、そういう意味ではフェアだなと思いました。
(3)気持ち悪さと疑心暗鬼の先に、読む価値があった
ここまで書くと、ひたすら気持ち悪く、混乱させられるだけの作品のように見えるかもしれません。
結構気持ち悪いものが出てきたり、生理的に受け付けないこともあるかもしれないので、グロ、いやゲロ注意な作品でもあります。
ただ、私としては、その先に辿り着いたところには読む価値があったと思っています。
誰も信用できない。起きていることも、どう理解すればよいのか分からない。
それでも、何が起きているのかを知りたくて、読み進めてしまうわけです。
そして、最後まで読んだことで、この奇妙な状況の連鎖を追ってきてよかったと思えました。
何がどうよかったのかまで書くと、これから読む方の楽しみに触れてしまいそうなので、このあたりが限界です。
少なくとも、私には、気持ち悪さと疑心暗鬼を味わいながら最後まで読むだけの価値がある作品でした。
④こんな方にオススメ
- オカルト要素のあるミステリーが好きな方
- 閉ざされた島や、曰く付きの場所を舞台にした物語が好きな方
- 奇妙な登場人物や、何を信じればよいのか分からない展開を楽しみたい方
- 混乱しながらも、自分なりに真相を考えて読み進めたい方
『呪祖の島』は、登場人物も出来事も奇妙で、終始疑心暗鬼にさせられる作品でした。
誰一人まともに見えず、読んでいるこちらまで混乱してくる。その読み心地は、まさにメダパニをかけられ続けているようです。
ただ、読み終えたときには、自分が何を信じ、何に振り回されていたのかを振り返ることになります。
気持ち悪いし、混乱する。それでも、最後まで読んでよかった。
ネタバレなしでは多くを語りにくいのですが、この奇妙な状況の連鎖の先に何が待っているのか、ぜひ確かめてみてほしい一冊です。
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