高校生の時に才能の塊の朝顔と出会い、プロを目指してバンドを組んだベースの瑞葉視点で描かれる物語。
人の輝きとは?
輝いていたあの頃を懐かしみながらふと思う。
人の輝きとは、夜空に星の輝きが届くのと同じように、何年後も後に輝きに気が付くものではないのかと?
そう、確かにあの時私たちは輝いてた。本当は今も輝いていることにも気が付かずに…
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①あらすじ
高校生の瑞葉(みずは)がクラスメイトの朝顔(あさがお)に誘われて結成したバンド〈さなぎいぬ〉。
4人の夢は、いつか紅白に出ること。
荒唐無稽に思えたその夢は、朝顔が初めて作ったオリジナル曲「光」を聴いた瞬間、色を変える。
……10年後、26歳の瑞葉は会社でPCを睨みつけていた。
休憩時に目にしたネットニュースで、さなぎいぬの紅白初出場を知る。
心から愛し、だからこそ辞めたバンドが、ついに紅白に出る。
※Amazonの商品ページより引用しております。
②読んだきっかけ
メフィスト賞受賞の『死んだ山田と教室』のデビュー作を読んで以来、読み続けている作家さんの新刊ということで、楽しみにしていました。
今回は高校生バンドの話ということで、今まで読んだ作品の系統としてはどれだ?と思いつつ。
ちょっと?変わった女子高生たちがきゃっきゃっうふふしてる話?というのがタイトルと前情報をみて思っていた…
③感想・レビュー
(1)私たちも星の輝きと同じなんだということを教えてくれる
人の輝きは、星の光に似ているのかもしれません。遠い星が放った光が、長い時間をかけて私たちのもとへ届くように、その人がどれほど輝いていたのかは、一緒にいるときにはなかなか分からないものです。別々の道を歩み、遠く離れてから初めて、あの時間も、あの人も、かけがえのない光だったのだと気づくのではないでしょうか。
瑞葉たちも、高校時代のただ中にいるときは、バンドの練習に夢中だったり、朝顔の才能を引き出すことばかり考えていて、自分たちが輝いているとは思っていなかったのかもしれません。夢が終わり、仲間と離れ、10年という時間が過ぎたからこそ、あの頃に放たれた光が、ようやくあの頃の輝きと向き合えたのではないかと思いました。
『私たちはたしかに光ってたんだ』というタイトルには、失われた青春への後悔だけではなく、「あの頃の自分たちは、間違いなく輝いていた」と、過去を肯定する意味が込められているように感じました。
そして、あの頃の輝きを思い出して、今の自分は輝いていないのか?と思うかもしれませんが、その輝きに気が付くのは同じく時が経った時かもしれないと教えてくれる作品でした。
(2)キャラクターが独特過ぎる気も…
本作で少し読みづらいと感じたのは、語り手である瑞葉のキャラクターがかなり独特だったことです。
作者の作品に独特ではない登場人物ってなかなかいないのはたしかなのですが、登場人物のバンドリーダーの朝顔の才能のためやバンドのためという強い思いがあります。
しかし、その思いの強さゆえに、自分の考えを周囲に押しつけているように見える場面もあるし、ときには独善的で身勝手にも感じられ、最後まで素直に感情移入をすることが難しかったなというのも本音です。
もちろん、瑞葉の危うさや執着が物語を動かしていることも確かです。誰もが共感できる主人公ではないからこそ、夢を諦めきれないことや、夢を諦めるときの生々しさが表れているともいえると思いますが…
ただ、登場人物への共感を重視して小説を読む人にとっては、瑞葉の言動が読みづらさにつながるかもしれません。
④こんな方にオススメ
- かつて本気で追いかけていた夢がある人
- 夢を諦めたことに、今も後悔を抱えている人
- 学生時代の友人と疎遠になってしまった人
- 青春が終わった後の人生を描く物語が好きな人
- バンドや音楽を題材にした青春小説を読みたい人
- 共感しやすい主人公よりも、危うさや欠点を抱えた人物に興味がある人
特に、過去の自分と現在の自分を比べて、「あの頃のほうが輝いていた」と感じたことのある人には、心に残る作品だと思います。
夢は叶わなかったとしても、それに夢中になっていた時間まで無意味になるわけではありません。遠く離れてから星の光に気づくように、過ぎ去った後で初めて、当時の自分や仲間がどれほど輝いていたのか分かることもあると思います。
皆が夢を追いかけて、すべての夢が叶うわけでもなく、諦める日も来ますが、夢を追いかけていた自分は確かに輝いていたんだと、あの日の自分に会いに行きたい方にオススメです。
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