【学校】(山田洋二)を久しぶりに観た話

①あらすじ

 下町の一角にある夜間中学の教師・黒井は、卒業式も近づいたある日、卒業記念文集のための作文の授業を行う。

 原稿用紙にそれぞれの思いを綴る様々な職業、年齢の生徒たちの横顔を見ながら、黒井は彼らとの思い出を振り返る。

 孫もいる年になって入学してきた在日韓国人の女性・オモニ。

 髪の毛を染めたツッパリ少女・みどり。

 昼間は肉体労働に励む少年・カズ。

 父は中国人、母は日本人で五年前に中国から移住してきた青年・張。自閉症で登校拒否児だったえり子…。

 やがて給食の時間に、クラスの一員・イノさんが死んだという悲しい知らせが届く。

 突然の訃報に悲しむ黒井と生徒たちは、食後のホームルームの時間、イノさんの思い出を語り始める。

②キャスト

監督山田洋次
脚本山田洋次
朝間義隆
原案松本創
製作中川滋弘
深澤宏(プロデューサー)
出演者西田敏行
竹下景子
田中邦衛
裕木奈江
萩原聖人
中江有里
音楽冨田勲
撮影高羽哲夫
長沼六男
編集石井巌

③久しぶりに観たくなった…

 夜間中学校につながる20歳のさやかを描いた『星の教室』(髙田郁)を読んでいて、懐かしくなって観たくなった本作品。

 義務教育で中学どころか大学まで通うのが当たり前となりつつある今の世の中で、いろいろな理由で中学校を卒業できない人がいたり、高齢者に差し掛かるのに字を読めない、書けないという人たちがいる。

 そんな人々が夜間中学校に通い、学ぶということはどういうことなのかということを想像すらしたことがなかったなと感じたので、観たくなった、というのが表向きの理由。

 本当の理由は、私が小学生の時、今は亡き母親と近くの映画館で一緒にみたなぁ。そういえば、母親が気に入って、2回見たなというのを思い出して、観たくなったというのが本音です。

 我慢できずにAmazonでポチっとしてしまいました(笑)

③感想・レビュー

・映像に味がある
 DVDはフル画面対応ですが、私が小学生の頃ですから1990年代の映像。当時、映画館で見た時はフルスクリーンで見ていた時は、家のテレビとは違うなと思ったものですが、今の映像で見慣れていると、映像は荒いなという感じがしました。

 今の人からすると道徳の映画を見せられている感じもするかもしれませんが、当時にみた私からすると、こういう映像も味だなと思います。

 スマホどころかポケベルも出てこない映画。今とは全然違う世界で、まさに映画でないと味わえない映像と世界だと思います。

・俳優陣の演技が凄すぎる
 見終えた時に思ったことは、俳優陣の演技が凄すぎるということ。

 主人公の黒井先生役の西田敏行さんの夜間中学校の先生感は夜間中学校に通ったことのない私でもこんな先生がいるんだろうなぁと本気で思うくらいに人間感もあってそれが外れていないというのも凄かったし、生徒でイノさん役の田中邦衛の演技の迫力も凄い。西田敏行につっかかるシーンがあるのですが、この人、本当に酔ってるんじゃないか?くらい、酔っ払いの演技の迫力が凄くて、比べちゃダメなんでしょうけど、大阪で酔っぱらって怒ってるおっちゃん、本当にこんな感じ!!となりました。

 女優の竹下景子は細くて綺麗だし、特別出演の渥美清も下町の八百屋のおじちゃん感があるし、今みたいに特殊な技術に頼らない、人間味というのが伝わってくる作品だなと思いました。
 
 山田洋二監督だからこういう味が出せるのかもしれませんが、人間らしさがしっかりと出ていて、演者の演技がただただ凄いと感じました。

・年を重ねたからこそわかること
 本作品を私が映画館で見た時は小学生でしたし、金曜ロードショーなどで放送された時も学生だったということもあり、イノさんも白いなとか、時折はさまれる面白エピソードが面白いということ以外、実はそこまで理解していなかった本作品でした。

 しかし、今、改めて鑑賞すると、唸るしかないくらい、登場人物たちの気持ちが分かったり、主要な人物であるイノさんという人がどれだけ大変な思いをして夜間中学に繋がったのかというのがわかると、普通に教育を受けて普通に仕事を生活していることを当たり前のように思っている自分はなんて傲慢なんだろうと思いました。

 公開当時も、インターネットなんてなかった時代、スマホどころか携帯電話さえ普及していなかった時代に、自分は読み書きを習いたい、字を読めるようになりたい。この願いをどこで叶えてもらえるのか調べようがない時代に、夜間中学に繋がることができたということがどれだけ奇跡的なことだったのか。

 子供のころ、学校が休みになったら家でゲームをして遊べるから休みになってほしいと台風が近づくたびに暴風警報が出ることを願っていた子供時代の自分に、本当に言いたい。

 学校にいって当り前のように授業を受けて、字を読み書きできるということがどれだけ幸せなのか

 ということを。この映画見て、それが当たり前だなんて、とても言えなくなりました。

・幸福とは何か
 そして、本作品の最も重要なこと。

 イノさんの人生を通じて、イノさんは幸せだったのか?ということから、生徒たちが考える、「幸福とは」ということ。

 これが、究極の授業だと思うし、学校でも教えてくれない内容の話です。

 当時、この映画をみた私では全く理解できていない部分でしたが、今見ると、ここの部分が一番突き刺さり、泣けました。

 幸せでありたい

 誰だってそう思うはずです。

 でも、その幸せって何だろうか?

 お金があって物があって、何にも困らない生活あるいは贅沢ができる生活でしょうか?

 文字も読み書きできず、仕事も転々として、やっと社員登用されたイノさん。お金もなく学もない。

 彼の人生は不幸だったのでしょうか?

 その答えは、映画を見てから感じてほしい部分ですので私の方では書きません。

 自分が幸福だと感じることが幸福なのかもしれませんね。

 

④『学校』の鑑賞方法

わたしのほうで2025年4月現在、配信されているとされているのは以下の通りです。

・Hulu
・Lemino
・FODプレミアム
・Amazonプライムビデオ(レンタル400円)
etc
DVDなどは製造中止の恐れもあるため、在庫切れの可能性も。

私の方は宣伝になりますがAmazonプライムビデオをオススメします。

【Amazon Prime Video】




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