【アルプス席の母】(早見 和真)感想・レビュー

①あらすじ

 秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見て。息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意する。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?
補欠球児の青春を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年。主人公は選手から母親に変わっても、描かれるのは生きることの屈託と大いなる人生賛歌! かつて誰も読んだことのない著者渾身の高校野球小説が開幕する。

※Amazonの商品紹介より抜粋しております。

②読んだきっかけ

 去年、店頭でみかけて以来興味はあったものの私の気分の問題で読む気は起きずそのまま買わずにいた作品。

 そして、去年、私の母が他界し、本作品を読むと母を思い出すかもしれなく、少ししんどいなと思って思い、ますます読む気をなくしていました。

 そして、2025年2月3日、本屋大賞2025のノミネート作品が発表されて、本作品がノミネートされていました。

 その時に思ったのは、もしかすると本作品を読みながら母と過ごした楽しかったことを思い出せるかもしれない。

 ネガティブな感情からポジティブな感情にかわったなと感じたので、私の中にいる母を思い出すべく、読むことにしました。

③感想・レビュー

 母子家庭で子供が高校球児という母視点で描かれる本作品ですが、特徴的なことはその息子が何を考えているのか、息子の心情らしい描写はほとんどなく、母の心情や考えを通して息子の成長を見守っていくというものです。

 そして、本当に今でもこんなことあるの?と思うくらいに、野球に力を入れているであろう学校ってこういうものなのかいうくらいにエグイ話だな思いながらもリアリティを感じる作品でした。

 いわゆる野球強豪校に入ると子供たちのレギュラー争いだけじゃなくて、親は親で父母会とか大変なことがあるんだな、野球の世界も親って大変だなと思いました。

 ただ、私は野球はやっていませんが、私も学問的な分野では母に期待を持たせ過ぎたというのもあり、私も一人っ子ではあったものの、進学関係で随分無理させただろうなと思い出してました。

 本作品の高校球児の息子ほどの人物だったかということは一旦おいておいて、私も中途半端に学校の成績がよくて、学問で期待させてしまったところもあり、母を期待させ過ぎたり、不安にさせたりしたんだろうなと思います。

 上に行けば上に行くほどに、自分が普通の人間なんだなと感じる瞬間があって、才能に恵まれていたということすら幻だとさえ感じる時がありました。

 でも、お金を出したり、家での世話などいろいろやってくれてたりお世話になっていて、親が期待して応援してくれていることは子供も嫌でもわかるから、そんな弱音はけなかったよなぁということを思い出してました。

 そして、子供の時って無条件に親は強い、頼りになる大人で間違えるわけがないと思っていましたが、母視点の本作品を読んでいると、みんな人間で、当たり前に失敗したり悩んだりしてるし、気が弱くて苦労したりすることもあったんだろうなぁと思いました。

 母は強し、でも当たり前のように脆い人間なんだなと感じた本作品。

 でも、決して弱いとか頼りないと感じさせなかった母を思い出しながら涙し、子供のことで期待したり不安になったり、アルプス席の母の一挙手一投足に感情移入してしまいました。

 やっぱり母が嬉しいと嬉しいし、悲しいと悲しい

 そんなことを感じることができる読書体験だったなと思います。

④こんな人にオススメ

・学生時代に夢を追いかけたり何かに打ち込んでいた方
・子供がいて親の気持ちを作中の母を通じて共感したい方
・本作品を通じて今は亡き母を思い出したい方

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感想(5件)

 

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