タイトルの行間に隠されているものとは【チャリを盗んで、夜明け】(黒川裕子)の感想・レビュー

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①あらすじ

 音楽が鳴り響くとき、彼の世界は新しい光につつまれる──。

 ケガで職を失った父と暮らす中学3年生の巧海。生活費に事欠くなか、年上の友人・アマロと「バイト」──夜な夜な自転車の窃盗──をくり返し、金を稼いでいた。

 いつものように自転車を盗んだその朝、巧海はトラックに積まれたピアノと、そのそばに座る男と出会う。

 ……弾く?

 弾くって。ピアノのこと……?

 そこから、巧海の世界は少しずつ動き始める!

※Amazonの商品ページより引用しております

②読んだきっかけ

 2024年に読んだ著者の『四界物語』以来、感想をXにあげて、Xで相互フォローしていただいている作家先生。

 その先生が、Xのポストで新作を出すらしい。タイトルが『チャリを盗んで、夜明け』というタイトルを初めて目にしたときは

 タイトルだけ読んだら、めっちゃ、尾崎(豊)やん!!(笑)

 となった、作品。

 どんな内容なのか、気になってしまい、これは読みたいなと思い、発売日をチェックしておりました。

 チャリ=自転車とわかる関西人な私にとって、舞台は関西なんだろうなぁと思いつつ、盗んだチャリで走り出すお話なのか、校舎の窓ガラス壊していく話なのか、支配からの卒業なのか(尾崎のイメージが強すぎる)と思いながら、発売日に購入いたしました。(なお、作者先生は尾崎とは一切関係ないとXで発売前にポストしております)

③感想・レビュー

 チャリという単語がタイトルについてるだけに、主人公巧海視点で語られる本作品は全編を通して関西弁。

 「貧窮」でもあり「ヤングケアラー」でもあり、主人公の巧海の中では「親ガチャ失敗」というおもいもあり、等身大の中3の巧海の心の声がとにかく生々しくて悲痛だなと感じるのが読み始めに思った印象です。

 生活をするために中3ができることは限られていて、私の時代では新聞配達とかやっている子もいたなぁと思いつつ、本作品の主人公がやっているのは、万引きと自転車窃盗という犯罪。

 その犯罪を繰り返していた巧海がどうやって夜明けに辿り着いたのか。

 チャリを盗んで、(〇〇〇〇があって)夜明け

 という、〇〇〇〇を描いた作品なのかなと思います。

 主人公は15歳ということもあり、今の私では当然主人公とは年齢が違うので、共感できるなと思うことはなくて当たり前。

 ただ、私がもし巧海と同じような状況に陥ったら、どうしてよいかわからないし、中学3年生という年齢では、大人のように自分でいろいろ自由に決めることもできないし、とはいえ子ども扱いもしてもらえないということから、

 何をやってよいかわからない

 この感覚はわかるような気がします。

 幸い、主人公巧海には気にかけてくれる大人がいるのでまだ救いはあるなと思いますが、とはいえ、父親は無職で仕事はしないし障害年金受給者で酒浸りパチンコ屋通い、母親と妹は主人公を置いて家を出て行ったという環境はなかなかに壮絶だなと思います。

 そんな環境の中、偶然出会った音楽(ピアニストとの出会いや楽器を演奏するということ)が巧海に夜明けへと導いていきます。

 まともに生きろ!盗みは悪いことだからやめろ!ということは簡単ですが、本作品を読んでみて思ったのは

 私もこういう境遇に置かれている少年たちを街中でみかけたとしても見て見ぬふりをする大人だなと思いました。

 「ヤングケアラーとなる子供がいるということが問題だ」とか、テレビでみて思ったりすることもあるし、実際に万引きを間近でみかけたことはないですが、そういうことをすることは良くないというのは分かっているのですが、実際に目のあたりにするとみなかったことにしそうだなと思いそうだし、主人公の巧海が嫌うような大人に私もなっているのではないか。

 そんなことを読みながら思いました。

 児童書のコーナーに置いている本作品。

 同い年くらいの子が読んで、主人公巧海のことをどう思うものなのかということに興味もありつつ、大人どころかアラフォーになった私はそんな風に思う作品でした。

 ちなみに、タイトルは尾崎豊とは一切関係がないようなのですが、先入観もありますが、主人公巧海に尾崎の歌詞にでてくるような感じをどことなく感じたのはナイショです。

④こんな方にオススメ

・タイトルをみて、物凄く興味を惹かれた方
・音楽が少年を夜明けに導くかもしれないと聞いて興味が湧いた方

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