本当にあるべき姿とは何なのか。それこそが自分らしさなのかもしれない【父の回数】(王谷昌)

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①あらすじ

 父親が死んだという連絡がある。母親は三十年以上前に父と離婚してから、まったく没交渉だった人間だ。葬式を準備する私と母の顔には、「めんどうくさい」という字がくっきり刻まれている(「かたす・ほかす・ふてる」)。

 誰にも同情されず、注目もされず、生きる営みを淡々鬱々と続ける人々の心を照らすものとは? 孤独な現代人の心を揺さぶる「ダイバーシティ」ファミリー小説五編。

※Amazonの商品ページより引用しております。

②読んだきっかけ

 『ババガヤの夜』で現在話題の作者。

 私も『ババヤガの夜』を読んで、本作品を手に取った一人でございます。

 たまたま書店で見かけて、今年発刊した作品を発見。

 ババヤガ以外の作品はどんな作品なのだろうか?

 この興味で読みたいと思い、購入いたしました。

 ちなみに、いまだに『ババヤガの夜』を『パパガヤの夜』だと作品の言い間違いをしそうになっていることは内緒です。

 また、タイトルを読んで、お父さんの何を数えるのかという、何がいやらしい意味なんじゃないか?と思っていたのもナイショです。

③感想・レビュー

 読んでいて、バラバラの短編5編なのに、なぜかバラバラな感じがしない作品。

 一つは、それぞれの章に、あるべき姿みたいなものや象徴が描かれているなという感じがしました。

 例えば、1章のレズビアンカップルの話も、LGBTQならば、権利を何らかの形で主張しなければならないのか?

 などなど。

 もちろん、理想の形や思うところというのは読者それぞれにあるとは思うのですが、

 あるべき形と違う自分、それこそが「自分らしさ」

 であるといわれているような気がしました。

 と、こんなことを書いてはいるものの、実は、本当に作者自体がそういうことを伝えたいのかは不明。

 そのほかにも、読んでいて、LGBTQであったり、ネットストーカーみたいなものあったり、SFだったり、生まれて一度も会っていない父の話だったり、それぞれの登場人物に起きる日常的な非日常を淡々と描いているように思え、明確にこれがメッセージだなと思ったところは正直ありません。

 おそらく、本作品は、読者によって印象が変わるのではないかと思うのはまさにこういうところで、読んでいて何もかすらなければ

 ただ変な登場人物が淡々と生活してるだけの作品

 だと思うし、

 読んでいて、何かかすれば

 この作品は登場人物を通じてこういうことを言ってるんじゃないのか?

 となるのかなと思います。

 そして、おそらく、私は『ババヤガの夜』と同様で、書かれていることから感じることや、世の中の問題などは、自分で感じてあとは読者が好きに考えなさいというスタイルのように感じましたので、王谷先生の作品って、本作品で2作目ですが、こういうタイプの作風なのかなと感じた作品でした。

 登場人物の物語を読み、登場人物を通じて、私はこう思う、共感できる、そうじゃないのではないか?と考えながら読むこと。これこそが、

「自分らしさ」なのではないか

 そんなことを読後に思った作品です。

④こんな方にオススメ

・読みながら考えることが好きな方
・『ババヤガの夜』を読了した方
・『ババヤガの夜』を『パパガヤの夜』と言ってしまいそうになる方(そんな奴おらんやろ)

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⑤次の一冊にオススメ

①【眠れない夜にみる夢は】(深沢 仁)

 男女、友情の物語が詰まった短編集。

 この話も、なんらか読者が読みながら何かかすらないと、何を書いているのかわからない作品。

 『父の回数』を読んでいて、今まで読んだ本に何か似たような感じの本を読んだなと思いだしたら、本作品でした。

 話の傾向は違うと思いますが、考えながら読書するということをしたい方にオススメです。

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②『給水塔から見た虹は』(窪 美澄)

 団地住まいの中学2年生の桐乃、同じく団地住まいの桐乃の同級生でベトナム人のヒュウ、そして桐乃の母での里穂。

 3人の視点による生きづらさを描いた物語。

 日本に住むベトナム人とそれに友達として関わる人、支援する人が軸となる物語ですが、各登場人物が現実と向き合いながら少しずつ「自分らしさ」とはどういうものなのかというのが描かれていると思いますので、オススメしたい一冊です。

↓『給水塔から見た虹は』(窪 美澄)のレビューはこちら

少しずつだけど現実と向き合って成長していく物語【給水塔から見た虹は】(窪美澄)の感想・レビュー – ジジの読書部屋

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