知らない札幌の歴史を知って胸が熱くなる話【札幌誕生】(門井慶喜)の感想・レビュー  

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①あらすじ

 幕末から昭和にかけて、未知の北海道で生きた、5人の男女。

 いまだ北海道で人気の高い、初代開拓判官・島義勇

 新渡戸稲造らと札幌農学校(現・北海道大学)の2期生として学び、のちに信仰を志した内村鑑三

 アイヌ民族の有力者の娘として生まれ、のちにアイヌの同胞を鼓舞する歌集を出版したバチラー八重子

 流行作家と農場経営の二足の草鞋の果てに、小作人たちのため自らの農地を解放した有島武郎

 暴れ川・石狩川の治水に取り組み、のちの「札幌」の発展の礎をきずいた岡崎文吉

 5人の北海道開拓を描いた歴史小説

※Amazonの商品紹介より抜粋しております。

②読んだきっかけ

 店頭で、平積みされていた本作品.

はじめにタイトルをみたときの印象は

 ドラえもん?の映画のタイトルにあったような?(「ドラえもん のび太と日本誕生」を想像したらしい)

 くらいにしか思っていなかったのですが、帯に島義勇(佐賀の乱の人?)、内村鑑三(日露戦争の時に不敬事件起こした人?)、有島武郎(小説家?)の名前があがっていたのですが、歴史の教科書でこの3名に札幌どころか北海道のイメージすらない…それに、屯田兵とかいろいろと教科書に出てくる割に北海道の歴史を知らないよなと思った歴史好き(自称)の私は見た目鈍器(500ページ以上ありそう)なこの本を手にとってみました。

③感想・レビュー

 幕末からの北海道開拓、札幌の都市づくりを描いた本作品。

 札幌誕生というタイトルからは札幌という都市が近代都市になるまでを描いた作品をイメージするかもしれません。

 しかし、本作品は札幌という街づくりを描いただけという話ではありません。

 建物という箱もそうなのですが、そこに住む人という部分にもフォーカスされています。

 北海道を開拓する時には自然との闘い、自然との共存というのがあるのだなと思ったことと、北海道のアイヌ人たちのこと、内地から開拓するためにあるいは移住してくる人々など、札幌という土地、北海道という土地は、自然との調和、人との調和が明治から急速に求められたところなんだなということがわかります。

 特に、人という側面が私は印象が残っていて、キリスト教が移民の人々の気持ちを一つにしたかもしれないし、内地の人がアイヌ人と共存することに役立ったかもしれない。

 フィクションの世界とはいえ、こういう想像を駆り立てる作品で、読んでいて胸が熱くなったり、北海道開拓から当時の日本をみるという感じがして、新しい視点を得たなと思い、歴史好きとしては楽しい約500ページだったなと思います。

 また、歴史の教科書からはなかなかイメージのできなかったことに気づけるのも本作品の特徴だと思います。

 私が歴史の強化に触れたときは、世界のリーダーはアメリカでした。

 歴史でも黒船来航のように、あたかも江戸の末期もアメリカは既に世界のリーダーだったようなイメージがありました。しかし、本作品を読んでみると、実は、幕末~第二次世界大戦終戦までは、世界最強は英国という当たり前のことに気づかされました。

 そして、本題の札幌という都市についても、今のイメージでは北海道と言えば札幌というくらいに今では一番大きい都市です。

 しかし、教科書でも出てくるように江戸時代に松前藩が貿易をしていたのは北海道でも函館。

 戊辰戦争の最終地点も函館の五稜郭。

 そう、北海道で一番さかえていたのは実は函館であり、北海道開拓の起点は函館にあったこと。

 歴史をたどれば当たり前なのですが、なぜか北海道というと札幌が一番大きい都市と当たり前のように思っていて、札幌ができた時から北海道で一番の都市だと思うくらい、今の札幌というのは出来上がって急速に発展したんだなと感じました。

 その苦労は本作品のページ数だけでは描き切れないものなんだろうなと思いつつ、札幌はどうやって近代都市になったのか歴史上の人物を通じて知ることができる作品だなとも思いました。

 ちなみに、私は、本作品に出てくるクラーク博士の「ボーイズビーアンビシャス」について、新渡戸稲造の解釈を聞いて、思わずくすっとするくらいに、そのくだりが好きだということも付け加えておきたいと思います。

④こんな人にオススメ

・札幌の誕生に無性に興味が湧いた人
・歴史好きな人
・胸が熱くなりたい人

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