装丁、タイトルからは想像できないディベートバトル開幕【臨終トーナメント】(やがみ)の感想・レビュー

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①あらすじ

 舞台は、とある離島にある超高級老人ホーム「クォールハウス」。

 国内最高峰の設備とサービスを誇り、選ばれし人間のみが入居できる楽園だ。

 金融業界の帝王、人道支援活動家、巨大宗教の創設者、元国民的アイドルetc.


 ホームに暮らすのは、さまざまな分野で成功を収めた上級シニアたち。

 地位、名誉、金など、あらゆるものを手に入れた彼らが人生最後に求めるもの。

――それは、完璧な死を迎えること。

 誰しもに平等に与えられている「死」という運命。

 もし、自身の死に様を意のままにデザインすることができたなら?

 人生の終末を賭けた、老人たちの「禁断のレクリエーション」が幕を開ける!

※Amazonの商品レビューより抜粋しております。

②読んだきかっけ

 書店で棺桶からおじいちゃんの顔が出ている、ホラーなのか冗談なのかわからない装丁に、タイトルも臨終という文字のつきの高齢者にとってどことなく不謹慎感もあり。

 帯が死を賭けておじいちゃんおばあちゃんが戦う?ということで、店頭で見かけた時に気になって、何の話?と思っていた本。

 ホラーなのか、ブラックジョークなのかわからない状況の中、3度くらい書店で出会うたびに気になり、気になるなら読んでみようと購入いたしました。

 この本を読む前に『エレガンス』(石川智健)や『チャリを盗んで、夜明け』(黒川裕子)と、結構重めの話を読んだということもあり、ライトなお話っぽいタイトルを選ぼうと思ったのもあります…

③感想・レビュー

 まず、はじめに書くと、ホラーではございません(個人的には最後の方、ちょっと怖かったですが)。

 いわゆる上級国民で選ばれた人間100人しか入れない老人ホーム。そこで行われるのが『完璧な死』を賭けて入居者8人がトーナメント形式で戦う(敗者はホームからの追放)というのが本作品のお話。

 世間的に成功者といわれるジジババによるディベートバトルなのですが、判定はAIによりジャッジされるというもの。

 判定要素は、論理性と感情性(会場内の観客の共感度)。

 お題は成功に必要なものは「努力か運か」などなかなかしっかりとしたお題で、しかも成功者たる上級国民のジジババが議論するので、主張もなかなか説得力があり、議論を読むだけでも面白いなと思います。

 8人の個性も素性も違う成功者であるジジババをこれだけ考えついた作者に頭が下がると思うくらいに、彼ら彼女らの主張にはそれぞれに個性もあって、面白かったです。

 主人公が30歳でホームの清掃員で、「金こそすべて」という考えの若者で、頭でっかちで肝心なことが抜けるという感じで、凡人感があり、考え方は違うもののどこか自分自身をみているような親近感もあり嫌悪感も感じる絶妙な人物。

 読者目線で読んでいて、それはないやろうと思うような行動もしばしばあって、「それは嫌な予感しかしないわ」と思うのですが、それが、良くも悪くも感じる本作の味となっているのではないかと思います。

 また、読んでいて侮れないなと思ったのですが、そもそも本作品の老人ホームの役割はなんなのかとか、『完璧な死』を賭けたこのレクリエーションは何のために開催されるのかという点もしっかりと書かれています。

 読んでいて、傍観者であるはずの主人公がトーナメントに出場しているある人物と関わることによって変化がうまれたり、トーナメントのお題に対する各トーナメント参加者の主張に考えさせられたりで、トーナメントの目的などは見落としていたなと思うので、これから読む方は、そういうことも意識して読むと面白いかもしれません。

 トーナメント参加者たちそれぞれの主張に耳を傾け、自分自身の価値観に気づいたり、はっと思わせられたり、気づきを得たりすることができるなと感じた本作品。

 私も仕事などでどうしても背伸びしたり見栄を張ったりするので、本作品によく出てくる「足るを知る」というのはグサッと刺さりました。そして、「足るを知る」からこそ挑戦というのができるということ、決して「足るを知る」は現状に満足することではないということを学んだ作品です。

 エンタメとして読むもよし、自分の価値観を見直すもよしな作品だと思います。

④こんな方にオススメ

・成功者のジジババの主張で自分の価値観と向き合ってみたい方
・「足るを知る」の意味を知りたい方。

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