①あらすじ
明治三十八年、福井県麻生津村。
増永五左衛門は、この地に農業以外の産業を根づかせるべく苦闘していた。
そんな時、大阪へ出稼ぎに出ていた弟の幸八が、当時はほとんど普及していなかっためがねに着目、村でのめがね製造を提案する。
村人たちの猛反対の中、輝く地平を求めて、二人は困難な道を歩み始めるのだった–。
※Amazonの商品ページより引用しております。
②読んだきっかけ
本作品の作者が書いた『満天のゴール』を読み終えそうだった時、帰りの電車で読む本を買おうかと思って、偶然通りかかった書店に入り、次読む本に迷っていたら、書店の人に声をかけていただき、藤岡陽子先生の本だったらオススメはこちらと聞いたのがこの『おしょりん』。
日本一の眼鏡メーカーの創業者のお話と聞いて、そういえば私、福井県がめがねの生産量が日本一と聞いたことはあるのですが、その歴史を知らないことに気が付き、俄然興味がわき購入。
普段、フィーリングで読むことがほとんどの私は、あまり人から勧められて読むということがほとんどなく、そういう意味でもワクワクとしながら購入いたしました。
③感想・レビュー
読むまで、増永眼鏡すら知らなかった私。
本作品を全般的に読んで熱いなと思いました。
冬の厳しい福井県で村人たちが安定して食べていけるようにするために、稼げる産業を作り出そうとする登場人物たちの意気込みが凄いなと。
福井県で本格的に眼鏡工場を作った増永兄弟。一度、大恐慌と火事で機業の工場を失い、再起不能とすらいえる痛手を負った増永兄の五左衛門。
村議員だった彼は、毎年の天候と農作物の値段に左右されて経済的に余裕がない農民は紡績産業の工場に子供を奉仕させるという名目で売ったり、屯田兵として派遣したりしてなんとか食いつないでいる農村に残っている人達や、農村を離れて都会に出て使い捨てみたいに労働力を搾取され、乞食同然の生活をしているという現状を知っており、このままだと地方の農村は衰退していくばかりだと考えていました。
村を衰退させないためにも未来の農村を救うべく画策しようとする。もちろん、自分たちの生活のためという私利私欲もあったかもしれませんが、それだけじゃなくて未来の村を守るために村を発展させるという考え方が素晴らしいなとまず思いました。
結果的に一度は失敗し、一度はその気が逸れ、なんとか五左衛門、妻のむめとその子供たちが贅沢しなければ食べていける資産を維持することにしたわけですが、そんなリスクを冒したくない彼のもとに弟の幸八がもちこんだ商材が眼鏡…
村の人どころか都会でもあまり眼鏡をつけている人を見ない。なんなら、私が子供のころでも眼鏡かけてる人をあまり見なかった記憶があるのですが、そんな眼鏡を製造したいと持ち掛ける幸八のもちかけは、今の成功や結末を知ってるから擁護できるものの、私が五左衛門なら、
いや、お前頼むからせめてもっとわかりやすい持って来いよ
ってなるわ、確かにと…
ただ、眼鏡は必ず売れるようになる!!というその根拠が読んでいて納得いくもので、日本が欧米と並ぶために発展を目指して追いつくためには、眼鏡が絶対に必要になるというのはわかるような内容だった上に、眼鏡をかえるような人が増えたからこそ、日本は発展したんだなと読みながら感じました(今はどうかはわからないですが)。
私は自分の生活にいっぱいで、人のことなんて考える余裕もないし、まして住んでいる地域の衰退なんてほとんど考えたことはないです。
眼鏡の製造工場を作った増永兄弟もおそらく、作品を読んでいて家を維持するのに精いっぱいだったんじゃないか?と思うのですが、今の自分たちがジリ貧になっていく未来よりも、村が未来永劫残る未来を考え続けたというのが凄いと思うし、かっこよくて憧れるなと思いました。
モノづくりに対する情熱も凄いけども、今の日本では労基法違反でアウトなことだらけだし、こんな環境で今の時代を生きる私はすぐに音をあげてしまいそうですが、何かを成し遂げようとする人というのはカッコ良い。
古臭いというかもしれないですが、この古臭さの原点が日本人らしいなと思うほどに私は本作品にのめり込みました。
④こんな方にオススメ
・福井県が日本一の眼鏡生産県であるルーツに興味のある方
・日本人らしい情熱に胸を熱くしたい方
・最後は絶対うまくいくとわかっている歴史物語を読みたい方
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