SNSで炎上しても生きていてこそだと感じる【踊りつかれて】(塩田武士)の感想・レビュー

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①あらすじ

 首相暗殺テロが相次いだあの頃、インターネット上にももう一つの爆弾が落とされていた。

 ブログに突如書き込まれた【宣戦布告】。

 そこでは、SNSで誹謗中傷をくり返す人々の名前や年齢、住所、職場、学校……あらゆる個人情報が晒された。

 ひっそりと、音を立てずに爆発したその爆弾は時を経るごとに威力を増し、やがて83人の人生を次々と壊していった。

 言葉が異次元の暴力になるこの時代。不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷にあったお笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。ほんの少し時を遡れば、伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。

 彼らを追いつめたもの、それは――。

※Amazonの商品ページより抜粋しております。

②読んだきっかけ

 去年、本屋大賞にノミネートした『存在のすべてを』やアニメ業界を描いた『デルタの羊』などなど、作者の作品はそこそこ読んでいて、書店に並んだときは「おっ!?塩田先生の新刊出たな」という感じで帯をみると、「だれか死ななきゃわからないの」という一文。

 どうやらSNSの炎上を描いた作品だということで、塩田先生が描くSNSをテーマにした作品…どんなんだろう?と思って手に取りました。

③感想・レビュー

 SNSをみていると、炎上を目の当たりにしますよね。

 政治的なものから、芸能人の不倫、社会で起きた事件などなど、起きた出来事に対して、嘘か真か、いろんなコメントを匿名で流れてきます。

 そんな私はというと、私も私が正しいものと思いながら、政治的な意見をSNSで発信することもあるし、某少年〇革命家のアカウントに対してなんらかのコメントをしたこともあります。

 私は本作品に出てくるようなネットの誹謗中傷で命まで落とすようなコメントをする人たちとは違うということは言いません。

 私も、匿名を利用していろんなことをSNSで発信している以上、作中の個人情報を公開された彼らと同じだという点をお伝えしたうえで、本作品の感想を書きたいと思います。

 いきなり変なことを書きましたが、本作品は私がこんなことを思うくらいに、SNSでのコメントの書き込みや炎上について考えさせられる作品です。

 SNSを見ていて誹謗中傷コメントを読んでいると、どう思いますか?

 私は誹謗中傷をしている人をきしょいと思う上に、誹謗中傷してる人なんか特定されるなり刑罰で罰せられるなりなんとか懲らしめることができないか?というようなことを考えてしまいます。

 本作品は、普段そんなことを考えていた私の願望を叶えてくれたのか?と思うほどに、ネットの誹謗中傷によって自殺したといわれるお笑い芸人を追い詰めた人たちなど83人の個人情報(氏名、住所、職業など?)が公開されます。

 公開する側の言い分と、公開されてしまった83人の一部の登場人物の焦りや不安から開幕する本作品は、その部分だけを読むと個人情報を公開された側(自殺については加害者であり個人情報を晒されたという意味では被害者)に対して「ざまぁみろ」とどこか胸がすっとするような気持ちになりました。

 しかし、SNSというのは匿名で好き勝手投稿して、その時の風向きでガラッと流れが変わるもので、ネットで誹謗中傷をガンガンやっていた人が英雄みたいにまつり上げられるのに、誹謗中傷の対象が自殺したりすると急に態度をかえる。

 炎上中は誹謗中傷をしていた人たちに興味がなかったはずなのに、風向きが変わると誹謗中傷をしていた人に対して誹謗中傷することに参加したりする。

 SNSで誹謗中傷することの原動力は何なのか?ストレスなのか、自身の正義感を満たしたいからなのか。

 答えは本作品を読んでも私はわからないままですが、こういったことを考えさせられる作品でした。

 また、誹謗中傷に対して「踊りつかれて」しまった芸能人はどうするべきなのか?

 誹謗中傷により自殺に追いやられてしまったお笑い芸人とは対比的に、SNSではないものの、ゴシップ記事により芸能界を離れた人気女性歌手についても描かれているように思うのですが、本作品の言いたいことはまさにここなのかなと思います。

 どんなことがあっても生きてこそ

 ということ。

 芸能界で生きていけなくたって、芸能界を離れれば生きていける。

 自殺したお笑い芸人もそうで、芸能界を去ればあるいは、SNSなんか捨ててしまえば生きていけるし再浮上のチャンスは訪れたかもしれない。

 無責任に他人への憎悪や自己満足、欲求不満などで発せられている部分もある負の感情をわざわざ受け止める必要はない。

 もちろん、私ももしかすると悪気があるわけでもないのに無意識で負の感情を匿名性の傘に隠れてSNSで投稿しているかもしれないし、自分の一言が受け取った誰かの命を奪うかもしれない。

 人が死なないとそういことがわからないということや、SNSでの迂闊なコメントへの警告が本作品に含まれているとも思いますが、SNSで誹謗中傷の対象になろうが、世間からバッシングを浴びようが、死なないといけないことではないということを教えてくれた気がする作品です。

 ちなみに、読後に本作品は「週刊文春」に連載されていた作品と書かれていて、なかなかパンチがきいている作品を連載し続けたなと思ったのはナイショです。

④こんな方にオススメ

・最近のSNSでの誹謗中傷を題材にした作品に興味がある方
・もしかすると自分もSNSで知らないうちに人を傷つけているかもしれないと思う方
・この作品が週刊文春に連載されていた?噓でしょ?と思われる方

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