①あらすじ
ある3月の週末、SNS上で「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りした。どうやら「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい歩き、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語っているらしい。彼の不可解な言動に、人々はだんだん興味を持ち始め――。
そしてその「人魚騒動」の裏では、5人の男女が「人生の節目」を迎えていた。12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員、娘と買い物中の主婦、絵の蒐集にのめり込みすぎるあまり妻に離婚されたコレクター、文学賞の選考結果を待つ作家、高級クラブでママとして働くホステス。
銀座を訪れた5人を待ち受ける意外な運命とは。
そして「王子」は人魚と再会できるのか。
そもそも人魚はいるのか、いないのか……。
②読んだきっかけ
『お探し物は図書室まで』を読んで以来、新刊が出るたびに読み続けている青山美智子先生の最新刊が出たということで。
青山先生作品は定期的に読みたくなります。
③感想・レビュー
実は人魚姫の結末を知らない私。ディズニーも見ないので、どんな結末なのかは知りませんが、本作を読んでいて思うのは、人魚姫はすれ違いの物語なのかな?と思うほどに、登場人物それぞれが、人に関していろんな悩みをもってすれ違っているなという印象を受けた本作品。
私もそうですが、本音はなかなかさらけ出さずに日々生活しています。
そして、おそらく、私以外の人もなかなか感情や本音を表に出すことなく日々生活していると思います。
本音なんてわからないものですから、相手の仕草や様子をみながら自分がどう思われているのか、あるいは自分をどう思ってほしいのかという感じで、日々過ごしていると思います。
ちょっとした仕草が気になって相手から嫌われているんじゃないかとか、もしかしたらあの子、私に気があるんじゃないかとかいろいろ考えると思いますが、それが正しいとは限らず、それの答え合わせをしたくて悶々とすることもあると思います。
そんな時、ふと思いませんか?
相手の本音や気持ちを知ることができたらな
と。
本作品のタイトルにもあるように『人魚が逃げた』も
何で逃げたんだろうか?
という意味が込められていると思います。そして、その答えは人魚じゃないとわからないということも含まれているのかなと思います。
王子には人魚がなぜ去ったのかわからないですが、もしかしたら何かのきっかけで人魚が去った理由はわかるかもしれない。
いつまでも人魚が去った理由は分からなくても、どう行動すれば人魚がかえってくるかは自分なりには見つかるかもしれない。
どこかファンタジックな世界でありつつも、大事に思っているあの人が何を考えているかはわからなくて、自分がどうして良いのかわからないという現実を見せられる作品ですが、何かのきっかけで登場人物たちが良い方向に向かっていくんだろうなと確信を抱かせてくれる作品だと思いました。
きっと、登場人物たちが悩み、気づきを得た時は読者である私たちも同じように何か大切なことに気が付かせてくれる作品だと思います。
④こんな人にオススメ
・いつもの青山美智子先生の作品大好きな方
・うまくいかないとかネガティブな感情をもっている方
・温かい気持ちになりたい方
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