①あらすじ
16世紀の神聖ローマ帝国。法学の元大学教授のローゼンは旅の道中、ある村で魔女裁判に遭遇する。
水車小屋の管理人を魔術で殺したとして告発されていたのは少女・アン。法学者としてアンを審問し、その無罪を信じたローゼンは、村の領主に申し出て事件の捜査を始めるが――。
魔女の存在が信じられていた社会を舞台に、法学者の青年が論理的に魔女裁判に挑むリーガルミステリー!
※Amazonの商品レビューより抜粋
②読んだきっかけ
今年はこのミステリーがすごい大賞の『謎の香りはパン屋から』(土屋うさぎ)を読み、次点の『一次元の挿し木』(松下龍之介)と偶然とはいえ、珍しくこのミス大賞を読んでいる私。
本作品も表紙とタイトルをみて面白そうだなと興味を惹かれたのですが、これだけ読んだのだからと隠し玉も読むかぁというのが一番の動機でした。
それに魔女裁判を舞台にしたミステリーって思い返しても読んだことがなかったなということで、そこにも惹かれつつ購入いたしました。
③感想・レビュー
魔女裁判を舞台にしているということで、探偵役のローゼンがやらなければならいないことは、魔女としてとらえられている被告の無罪証明だけではダメで、魔女ではないというところまで証明しないといけないというところが普通のミステリーと違うところ。
そして、村の不可解な死の真相はすべてまじないとか魔女の仕業とか、根拠もなく信じる人達が相手ということもあり、論理だけでは一筋縄では解決できない。まさに、村人たちと「交渉する」というようなことが大事な要素となる舞台で、そんな人たちを納得させるような推理を探偵役のローゼンがしなければならないことだという。
その探偵役のローゼンはあることから法学教授の職を辞し旅をしている者で、たまたま魔女裁判が行われようとしている村を訪れたという状況。
論理力は人並み外れているとはいえ、狂信者ともいえる相手に調査で苦戦するところがしばしば見受けられます。
また、「魔女ではない」という、○○ではないというのは、裁判上悪魔の証明と言われることを証明することの困難さをどうやって乗り越えるのか、これが本作の見所だと思います。
調査パートでいろいろと苦労するローゼンが、実際に被告人を魔女でないと証明する裁判パートは読んでいて、なるほど、その当時らしいやり方なのではないか?と個人的には思っていて、面白いなと思いました。
ただし、手放しで面白いというのであれば、本作は間違いなく、前述した『謎の香りはパン屋から』や『一次元の挿し木』に負けるわけがなく、私が読んでみて思う、物足りなさはあります。
1つ目は、登場人物に対する魅力です。
私は、語り手のローゼンを含め、他のキャラクターに対して愛着というか、読み進めたいと思えるようなキャラクターの登場がなかったなという印象。前2作は、あくまで私がという主語になりますが、読み進めたくなるような魅力ある登場人物たちだったなと思います。本作品で読み終えても残っているキャラクターが村の神父というくらいで、特にローゼンが元法学教授なのに簡単に言い負かされてしまうシーンが多くて、好きになれる登場人物は少なかったなと。助けてあげたいはずの魔女容疑がかかっている女性アンも、そこまで助けたいか?と思うくらいだったので。
2つ目は、信教だとか、まじないとかを非論理的なものは否定しがちなのに、いくら伏線が張られているとはいえ、個人的には最後の内容は納得いかないかなという点。
最後のそれができるなら、それこそなんでもありみたいにならないか?ということにならないかと思いました。
最後に、根本的なことなのですが、ミステリーを多少読み慣れて素人に毛が生えた程度の私でも、最後の詳細はわからなくとも、早い段階で、ある程度の予測がついて、それが裏切られたなという感じがなかったという感じだったので、おそらく選考委員もその辺があったのではないかと思います。
と、なぜか、このミスで上位に行けなかった理由みたいなことを書きましたが、
魔女裁判で無罪を勝ち取るという意味と、魔女裁判で被疑者を魔女ではないと公に宣言して調査をすることの困難さは、当時、まさにこんな感じだったのだろうと思うほどのリアリティが伝わってくる
そんな作品であることは間違いなく、そこは本当に面白かった部分だと思う作品でした。
④こんな方にオススメ
・魔女裁判×ミステリーというだけで興味が湧いた方
・リアル魔女裁判の無罪証明の方法を読みながら考えてみたい方
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