①あらすじ
誰も知らないあなたの過去が、もし、小説で暴かれていたらーー。
言葉で私たちを攻撃する魔者は誰だ?
SNSの炎上、加熱する週刊誌報道……人の不幸を喜ぶ人間がいる。
※Amazonの商品ページより抜粋しております。
②読んだきっかけ
仕事の外回りで本見ながら移動しようと思っていたら、本を職場に忘れて仕方なく、移動。
移動先の近くにたまたま書店があって、これは何かの運命だなと思って入った書店。
確か、『それいけ平安部』とかの発売日の翌日だったと思うのですが、文芸コーナーをのぞいても、新刊どころか、今年発売した小説が見当たらない…
凄く大事そうに飾っているのが『サドンデス』(相場英雄)で、確か2年位前の本じゃね?とか結構前の本のしかも初版だらけ…
逆にこういうところに私の見逃した本がしかも初版で置いているかも!?
となり、インスタ映えしそうな陳列されている本の中から一冊に今回紹介する『魔者』が陳列されていました。
装丁がソフトカバーというのも良いなと思いつつ、帯の情報量が多いし、面白そうじゃね?
発刊は2024年の8月末頃。
間違いなく私は飛ばしてたなと思い、運命を感じながら、購入しました。
③感想・レビュー
犯罪によって加害者がいれば被害者がいる。
そして、加害者、被害者には家族がいる。
本作品は、その加害者家族と被害者家族が登場人物として登場する話なのですが、加害者家族のあるべき姿とは、被害者家族のあるべき姿とはどういうものなのか。
正直、正解などないに等しいこの問いかけ。
特に最近は、被害者にも悪いところがあるというように、なぜか被害者も潔癖でなければならないような風潮もあって、いじめもいじめられる子も悪いみたいな論調に似てSNSで叩かれるような時代ですから、本作品の扱う内容というのは、ミステリーというジャンルに限らず、いろいろな問いかけや、いろいろな気づきを得られる作品なのかなと思います。
本作で気づくことは被害者家族や加害者家族の気持ちを無視するかのように振る舞う、第三者がその家族たちをかき乱していることが多いな気づきました。
私も含めてという話なのですが、たとえば世間を震撼させるような殺人事件が起こると、裁判官になったような、神様にでもなったかのように、振る舞う人がいます。
この事件を起こした人はろくでもないから死刑にしろとか、被害者も悪いから殺されたってかまわないなどのお気持ちをSNS等に投稿したり、加害者家族に誹謗中傷したり、被害者家族に対しても損害賠償をもらえてよかったですねみたいな心無いことを言ったりする。
本作品の主人公の27年前の出来事にはSNSというのは発達していなかった時代ではありつつも、本人には悪意ではなく、悪に立ち向かう正義のヒーロー気取りに大多数の力を借りて加害者家族に対してなんも被害も受けていない安全圏の第三者が裁きを与えるというこの構図はSNSで誹謗中傷してるのと変わらないなと思いました。
そして、気が付くのです。本作品の登場人物だけじゃなくて、私も、今、このレビューを読んでいただいているあなたも「魔者」なのかもしれないということに。
そんなことを思いつつも、読後はあたたかなやさしさすら感じる作品でもありました。
本作を通じて、自分の中にいるかもしれない「魔者」と会話しながら読むのも良いかもしれませんね。
④こんな方にオススメ
・加害者家族、被害者家族、いじめのテーマに興味のある方
・自分の「魔者」と対峙してみたい方
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