①あらすじ
「営業ノルマ」は、2週間で2億円。
稼げなければ、全員まとめて地獄行き。
営業成績第1位、契約成立のためには手段を選ばない、凄腕営業マン・鳥井。
アポイント先で刺殺体を発見し、自身も背後から襲われ意識を失ってしまう。
鳥井を襲ったのは、「ビジネス」として家主の殺害を請け負っていた「殺し屋」だった。
目撃者となってしまった鳥井は、口封じとして消されそうになる。
絶体絶命の状況の中で、鳥井は殺し屋相手に「ここで私を殺したら、あなたは必ず後悔します」と語り出す。
「今月のノルマはいくらでしょう? 売上目標は?」
「契約率は25%……、残念ながら、かなり低いと言わざるを得ません」
「どうしてこんな状況になるまでプロの営業を雇わなかったんですか?」
そう……これは商談なのだ。
研ぎ澄まされた営業トークを矢継ぎ早に展開し、場の空気を掌握する鳥井。
「あなたは幸運です。私を雇いませんか? この命に代えて、あなたを救って差し上げます」
契約成立。
鳥井は、殺人請負会社に入社することに。
前代未聞の、「命がけの営業」が始まる――。
②読んだきっかけ
書店で見かけた本作品。
帯には江戸川乱歩賞とあり、タイトルみて、江戸川乱歩賞らしくないというイメージでした(なんならこのミス大賞っぽいタイトルですよね)が、面白そうだなと思いながら購入。
作者の野宮有先生の名前を目にしてもピンとこず、あとから2年前の年末に読んだ『どうせ、この夏は終わる』の作者だったことがわかり、ああ、あのライトノベルで読んだ!というのは内緒。
そういえば、私、乱歩賞受賞作をリアルタイムで読んだのっていつぶり?と思いながら、読書履歴や一覧を辿ったのですが、読んだことがないという事実に気が付く。読了済みでも『天使のナイフ』(薬丸岳)、『13階段』(高野和明)の2作のみと、読書ライフの中で読んだことある作品が少ない!と思いながら…
ということは、私にとっての乱歩賞作品を発売間近で読むということが初めての作品ということになりました。
乱歩賞作品、もっと読んでたと思ってたんですけどね…(しつこい)
③感想・レビュー
営業とミステリーってどうなの?と思ったのですが、合うなぁと思いながらも楽しいなと思った読後。
主人公の凄腕営業マンの鳥井のキャラクターもつかめそうでつかめない感じだし、何を考えているかわからない気持ち悪さもありつつも、読めないほどの気持ち悪さでもないという絶妙な主人公だなと思いました。
営業職をやったことのあるなしに関わらず、主人公鳥井の話術がおもしろく、狂気の沙汰のはずがどこか引き込まれるので、鳥井が次にどんな行動に出てどんなことを話すのかが気になりどんどん引き込まれました。
また、営業の頭脳戦みたいなところもあり、鳥井の相手側もかなりの手練れ感があって、これ本当に鳥井さん相手を出し抜けてるのか?などなど生死を賭けた営業を読んでいてハラハラドキドキする感じもあり、読みやすいなぁと思うのですが、驚くべきところは
営業でミステリーが成立しているところ
私も営業職で正直実務では出てくる営業理論は参考程度レベル。どちらかというと、交渉の駆け引きで使うもので、一流といわれる営業は書籍などに頼らなくとも自然と身に着けていることの方が多い内容なのではないかと思うほどにありきたりな営業術なのですが、そのありきたりを裏社会の営業に使うというある意味ファンタジーなところも面白いなと思うのですが、営業術がミステリーに結びつくというのは、私が記憶している限り初めて読む作品だと思います。
アイデアも面白いし、最後まで作品として面白く仕上げているなと感じた作品です。
読んでいて、私は欠点らしい欠点というのは心当たりがなく、敢えて言うなら、殺し屋という裏家業の営業にしてはライトすぎるかなというくらいですが、重厚感出してたら面白みに欠けるのではないかというのも正直感じる作品だと思うので、納得の受賞作だったのではないかと思います。
なんにせよ、面白い読書であったことは確かでございます。
④こんな方にオススメ
・営業職の方
・裏稼業の営業でミステリー?という言葉に反応してしまった方
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