火星と地球、人と人の距離。特に人々の心の距離を感じる作品。【火星の女王】(小川哲)の感想・レビュー

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①あらすじ

 地球外知的生命の探求のため、人生をかけて火星にやってきた生物学者のリキ・カワナベは、スピラミンという物質の結晶構造の変化を発見する。

 いっぽう火星生まれの学生、リリ―E1102は、地球に観光に行くことを夢みて遠心型人工重力施設に通っていた。

 地球で種子島在住の白石アオトは、ISDA職員として働きながらリリとの約束を思い出していた。

 カワナベの発見が世界を揺るがすとき、リリの身にも危機が迫り――

 地球と火星、遠く離れたふたつの星をめぐって人々の心が交錯していく壮大な人間ドラマ。

※Amazonの商品ページより引用しております。

②読んだきっかけ

 小川先生の作品を読むのは『地図と拳』以来。

 いつも通りのタイトルが気になって。

 ここ最近、惑星開拓する作品を読んでいる(『もつれ星は最果ての夢を見る』(市川憂人)、『星空都市リンネの旅路』(蒼月海里))せいか、妙にタイトルに惹かれて。

 明らかにSF感がある本タイトルですが、私は今年、いくつの惑星を読書で廻ったのだろうかと思いながら、次は火星だなと思いながら購入いたしました。

③感想・レビュー

 地球と火星の物語ですが、語り手の4人のうち3人は火星サイド。

 基本的には火星サイドのお話です。

 小難しい話はほとんどないものの、火星のコロニーで生活している人々の数とか規模を想像するのはなかなか難しく、タイトルの火星の女王たる意味もそういう感じなの?と思うほどに、思っていた以上に火星のスケール感が小さく感じたような気がしたというのは本音。

 あとは、ドラマ化で既に映像ありきなのかもしれないのですが、読んでいて想像力を働かせ辛い部分もあったようには感じました。

 そういう部分は感じたものの、帯にあるように、本作品の火星と地球の距離や人と人との距離という部分に関しては、十分に作中からいろいろな距離感を感じたなと思います。

 地球と火星の距離の通信は「光では遅すぎる」。

 今やネット通信で世界各国とほぼリアルタイムに通話通信ができる時代。とはいえ、テレビの報道で通話や通信をしていると、数十秒ぐらいのタイムラグがあって、その数十秒くらいのタイムラグですらイライラすることすらあります。

 そんなラグが5分ある地球と火星の物語。

 タイムラグというのがあるのはわかっていても待つのはしんどいものだろうなぁと想像できます。

 そんなタイムラグ以外にも本作品では人と人と心のラグで、近くにいるはずの火星の人々同士でも地球と火星の距離以上の心のラグが生じていることも描きたかったのかなと思います。

 そして、どんなにいがみ合っても、憎しみあっても、心にラグが生じても一体になれば素晴らしいものになる。

 「火星の女王」はそんなことを教えてくれたのかもしれませんね。

④こんな方にオススメ

・火星で生命体が見つかったと聞いてワクワクする方
・物理的な距離と人と人の距離に興味がある方
・NHKドラマで視聴予定の方

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