タイトルの意味を考えさせられる、地方の過疎地の医療現場を舞台にしたミステリー【白魔の檻】(山口未桜)の感想・レビュー

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①あらすじ

 研修医の春田は実習のため北海道へ行くことになり、過疎地医療協力で派遣される城崎と、温泉湖の近くにある山奥の病院へと向かう。

 ところが二人が辿り着いた直後、病院一帯は濃霧に覆われて誰も出入りができない状況になってしまう。そんな中、院内で病院スタッフが変死体となって発見される。

※Amazonの商品ページより引用しております。

②読んだきっかけ

 去年、『禁忌の子』でデビューした作者のシリーズ2作目。

 『禁忌の子』で告知はされていたものの、いつに発売かはわからなかった本作品が、2025年8月28日に発売されると作者のXで告知されて以来、楽しみにしておりました。

 クローズドサークルということは分かっていてそれ以外の情報は私は入れず、発売日に購入して、絶対に8月中に読んでやる!という、夏休みの宿題の追込み期に本気出す!みたいな感覚で、無事に発売日に購入。

 全裸待機でお待ちしておりましたの感覚で発売日に無事に読み始めることができました。

③感想・レビュー

 まず、読む時に必須なことがございます。

 登場人物と病院の見取り図のページ(はじめのほう)は必ずブックマークしておいてください。

 理由は、登場人物が多すぎるのと、病院内の部屋の位置関係がわからないと楽しめないからです。

 そして、私は、城崎先生と春田先生が派遣された病院、「更冠」の読み方がいちいちわからなくなるので、ブックマークしました。登場人物である「八代院長」の紹介に病院名のふりがなを打ってくれていて物凄く助かりました(笑)

 また、結構登場人物の名前が出てきて、この人誰だっけ?となるし、患者さんの名前もたくさん登場するので、病院内の部屋の見取り図や登場人物の確認に何回も往復することになりました(笑)


 そんな本作品ですが、過疎地の医療現場の過酷さも描かれていて、ただ事件が起きて事件を解決するだけではなく、むしろ事件の解決だけでは解決できない、事件の背景こそが描きたかったことなのではないかと思うほどの内容になっています。

 作者もXで今年の春頃に読了したと感想を書かれていた作品、医療崩壊の医療現場を描いた『受け手のいない祈り』(朝比奈秋)に通じる部分もあり、それをマジックリアリズムで描いたのが朝比奈先生で、ミステリーで描いたのが本作品なのかもしれないなと思いながら読んでました。

 そのミステリー部分ですが、ミステリーオタクでも何でもない読者でも思いつく疑問点をそのまますぐに疑問として提示され、一見、事件を分かったきになりつつも、意外と霧のように見えないというところが読みやすくもあり、もどかしくも感じました。

 そして、ハラハラドキドキし、次、これどうなるの?とどんどん先へ読み進めたくなる感じはたまりませんでした。

 個人的には、病院内で起きている状況でも事件の捜査を進める必要性を説く探偵役の城崎先生が、事件に首を突っ込んでいく理由には納得はいっていないのですが、これは私が本作品を読む前に、戦時下でも警察として殺人事件の捜査をする警察を描いた『エレガンス』(石川智健)や東北大震災直後に被災地で起きた殺人事件を追う警察が描かれている『逃亡者は北へ向かう』(柚月裕子)を読んでしまったということもあり、警察ならいざ知らず、派遣された医者の城崎先生が病院内の事件を調査する理由としては弱くないか?とは思いました。

 しかし、その2作品にたまたま出会っていたから気になったということで、この2作品を読んでなかったら全く気ならなかっただろうし、私がこの病院でこの状況に出くわしたら、警察じゃなくても誰かに調査してほしいと思う自信しかないので、そこが悪いというわけではないのですが、なぜか今書いていて、どうしても書きたいと思うほどに私の中では気になっているので、感想として書かせていただいております。

 とはいえ、そんな細かなことはどうでもよいくらいに最後はどんどん先へ先へと読み進めたくなるうえに、最後、タイトルの意味ってそういうことなのか!?

 と思う作品でした。

 濃霧に包まれた病院のことだけではない!

 ネタバレみたいな書き方になりますが、タイトルの意味を是非知っていただき、読後に

 そういうことか!

 となっていただきたい作品だと思います。

 なお、『禁忌の子』を先に読むべきか?と質問される方は結構多いと思いますが、個人的には探偵役は城崎先生で同じなのですが、語り手である主人公は別なうえ、前知識なくても読めると思います。

 城崎先生が、イケメンの超変人医師だということだけわかっていれば大丈夫だと思います。

④こんな方にオススメ

・極限状態のクローズドサークルのミステリーを読みたいと思う方
・過疎地の医療現場を舞台にしたミステリーに興味を持たれた方

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⑤白魔の檻を読んだあとは?

・本ページで紹介した救急医療の医療崩壊を描いた作品

 『受け手のいない祈り』(朝比奈秋)

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 マジックリアリズムで描かれる医療崩壊寸前の病院【受け手のいない祈り】(朝比奈秋)の感想・レビュー  – ジジの読書部屋

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・本ページで災害時などの極限状態でも職務を遂行する警察が登場する作品

 『エレガンス』(石川智健)

↓レビューはこちら

戦時下の空襲が始まった東京で自分らしく生きることとは?【エレガンス】(石川智健)の感想・レビュー – ジジの読書部屋

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 『逃亡者は北へ向かう』(柚月裕子)

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3・11が舞台になっていて評価が難しい作品【逃亡者は北へ向かう】(柚月裕子)の感想・レビュー – ジジの読書部屋

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