【ブレイクショットの軌跡】(逢坂冬馬)感想・レビュー

①あらすじ

 自動車期間工の本田昴は、Twitterの140字だけが社会とのつながりだった2年11カ月の寮生活を終えようとしていた。最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトをひとつ車体の内部に落とすのを目撃する。
 見過ごせば明日からは自由の身だが、さて……。以降、マネーゲームの狂騒、偽装修理に戸惑う板金工、悪徳不動産会社の陥穽、そしてSNSの混沌と「アフリカのホワイトハウス」――移り変わっていくブレイクショットの所有者を通して、現代日本社会の諸相と複雑なドラマが展開されていく。

※Amazon商品紹介より抜粋しております。

②読んだきっかけ

 『同志少女よ、敵を撃て』を読んで以来、作者の新作が発売されたらとりあえず購入の姿勢でいる私。

 今回も、3/15発売と聞いて、これはまた読まないといけないなと待ち構えておりました。

 仕事が年度末でしたが(笑)

 ちなみに、前2作が第二次世界大戦中のお話だったので、本作品のタイトルを見た時は、ブレイクショット?スナイパーのお話かな?と思ったのはナイショです。

 そして、本作品を書店で見た時の第一印象は

 ブ厚っ!!

 です(笑)

③感想レビュー

 いきなり登場した人物の名前が本田昴とみて、ホンダ?スバル?となり、しかも、どうやら舞台は近年ということに戸惑ったわたし。

 戦争とか、第二次世界大戦ぽくないので、一瞬、逢坂先生の本じゃなくて間違った本買ったかな?と疑うほどに(失礼)、驚きを隠せなかった私。

 しかも、車に詳しくない私は、ブレイクショット?なっばしょと?(九州の方、ごめんなさい)、いやなんですの?それ?くらいの感じで読み始めました。

 読み始めは、中央アフリカ?急に海外になったりしてどうした?そもそもエピローグからの繋がりはどういうことなんだ?と思ったり、各章の登場人物が巻き込まれる事件が、あれ?これ?テレビのニュースで似たようなことあったぞ?くらいの有名な事件がモチーフになっていたりと戸惑ったり、気づきが多い内容になっています。

 そして、読み進めていくと、わかります。

 これは、普段、表ざたにならなければわからない類の不正や違法行為など光の当たらない闇部分に登場人物が気が付くと巻き込まれてしまうお話なのだと。

 そして、その闇部分に飲まれて、闇から逃げたり、自分自身を見つめなしたり、闇に立ち向かっていったりなど、絶望だけではない希望が詰まった作品なのだと思いました。

 普段、生活している私。

 特に、今自分が仕事やプライベートで違法だなと思ったり不正に手を出しているなという意識って、ないのですが、本作品のように実は、自分自身が気が付いてないだけで、闇の部分に足を踏み入れているかもしれない。

 私は、テレビなどのニュースで事件発覚後にいろいろなことを知りますが、知った後の結果論はいくらでもいえる。

 でも、実際の当事者となったときに、その違法行為や不正行為はそう簡単に見抜けるものではないでしょうし、気が付いたときにはすでに沼に溺れているなんていうことがよくあるのではないか。

 そんなことを、各章の登場人物を通じて思いました。

 そして、その沼に浸かってしまったが最後、生活するために仕事をしなければならないという自分は、登場人物のように仕事をやめて逃げ出すという選択肢はなく、気が付いたら自分の居場所を確保するために不正であろうが、違法であろうが会社や上司の指示に従ってしまうのではないか。

 そう思うと、本作品の闇部分の話は、決してフィクションではなく、自分自身にも起こりうることなんだろうなと読んでいて思います。

 ただ、闇部分だけを書いているのではなく、不正や違法行為に巻き込まれてしまう登場人物は闇に染まり続けるのではなく、闇から抜け出そうとし、それが、今の私自身にも響く内容だったなと思います。

 私も、違法行為や不正行為に巻き込まれているのかどうかというのは全く分からないですが、仕事をはじめるころというのは、いろいろな野望や夢があったように思います。

 出世してやろうとか、やりたい仕事をやって天職にしてやろうとか、ワクワクするくらいに仕事欲に満ちていたなと思います。

 いつのまにか、マンネリ化したのか、飽きたのか、自分の能力の限界を知ったのか、疲れ果てたのかはわかりませんが、仕事をはじめた頃の自分と今の自分は仕事に対する姿勢やモチベーションが違うことに気が付きました。

 そして、本作品を読んで、今の私はもしかすると本作品の登場人物同様に自分を見失っているのかもしれない。

 なりたい自分をもっと貪欲に求めても良いのではないか?

  そんなことを読後は考える、ブレイクショットを巡る登場人物たちのタスキリレーを楽しんだ作品だったと思います。

④こんな人にオススメ

・逢坂先生ファンな方
・最近、仕事のマンネリに疲れてきている方
・あっ、この話あの事件だ!!と感じたい方

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