①あらすじ
人生を変えるために青年は北を目指した
震災の混乱のなか、ふたつの殺人事件が起きた。
逃亡する容疑者と追う刑事。
ふたりはどこへ辿り着くのか――。
※Amazonの商品紹介ページより抜粋しております。
②読んだきっかけ
2025年の直木賞候補で話題になっていた本作品。
発売当初もXのTLで見かけていたのですが、あまり興味がなかったというのは本音。
直木賞のLive放送で、東北大震災が舞台になっていると聞いて、興味を持ちました。
Live放送では、本作品か、『乱歩と千畝』(青柳碧人)が有力っぽい言い方だったので、『乱歩と千畝』が推しだった私は、受賞発表前に、推しと同じくらいの評価なら読んでみたいなぁと思いました。
そして、直木賞の該当作なしとなったときに、なぜ選ばれなかったのか?それが気になって直木賞のことが心に残っているうちに読みたいと思い、購入いたしました。
③感想・レビュー
一読者で文学とは何かと言われるとさっぱりわからない私ですが、読了後に思ったことは
これは確かに直木賞作品になるのは難しいわ…
と思ったのが本音。
読み手がどう思うのかというと、それは自由なんだということを前提に書きますが、読み手がこういう公の場で感想を書くのがかなり難しいなと。選考委員が悩むのもわかるわというくらいに、本作品、公にすると手放しでは推すことが難しい作品だなと思いました。
主人公というか、タイトルの逃亡者たる真柴亮なのですが、震災前からもめぐりあわせが非常に悪い登場人物で、「こういう運の悪い人がいるな」というくらいの認識でいるのですが、実は巡りあわせとか、運が悪くてなかなか理不尽な人たちとして登場するのが津波の災害に遭った「被災者たち」が逃亡者たる真柴と同じ境遇の人のように「見えてしまう」というのが、1つ厄介な要素だなと思います。
そして、読み手は東北大震災で被害に遭われた方々の見た景色や家族への想い(行方不明になった家族を必死に探したりする様子等)にフィクションであるとはいえ、触れて疑似体験をできてしまうというのも悩ましい要素なのだと思います。
私は被災してないし、東北大震災の時は関西にいたので、テレビの中でしか知らない世界でしたが、津波が町や建物、移動し車を飲み込んでいく状況はリアルタイムでテレビの映像を見ていました。
悪く言えば、火事場の野次馬とかわらない私が、本作を読んで、震災の疑似体験をしたような感覚になって、「疑似体験できてよかった」という感想を述べてしまってよいものかどうかすら思い、自分自身が物凄い作品を読んだなと思いつつ、自己満足に止めておかなければならないのではないか、作品の良さは東北大震災があって、その被害者がいることで成り立っている気がしてしまい、難しい作品だなぁと思いました。
作品としては、すぐに引き込まれるくらいに物凄いパワーを感じる作品だし、作者の柚月先生や出版社ももちろんいろんな配慮をしながら世に出した作品だろうと思うので、私が書くようなことも想定されてるとは思います。
私は本作品については、
めちゃくちゃ引き込まれて先をどんどん読みたくなる作品
だと思っているし、本作品を読めて良かった、本作品に出会えてよかった思っています。
ただ、私の読み方は作者が意図したことなのかも不明ですし、私のほうが深読みという名の勘違いも含まれているかもしれませんが、震災から10年以上経過しているとはいえ、震災当時関西にいた私ですら、本作品が世に出たのは時期が早かったかもしれないなと思う本作品。
でも、読んで後悔はないし、こういう表現がよいのかわからないですが、面白いし引き込まれてしまった作品。
引き込まれ過ぎた結果、本当に楽しんでしまって良かったのか、そしてそういう感想を書いてしまって良いものなのか。
私の中ですらそういう抵抗のある作品で、じゃあ東北で被災された方々が本作品をそのまま受け入れられるのかと心配してしまう作品だったなと思いました。
映画『パーフェクトワールド』(主演ケビンコスナー)を見た時のような逃亡中の感じは私は好きだなと思ったし、最後本当にどうなっちゃうんだろうか?と思いながら読んだり、作品としては申し分ない作品だなと思いますが、そこを手放しでほめたたえて良いものか?という葛藤が生まれる作品だったなと思いました。
④こんな方にオススメ
・東北大震災の当時幼かったもしくは生まれていなかった方
・東北大震災の際時の当時のことを思い出しても良い方
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