①あらすじ
二〇二〇年五月、大学生の芹沢涼風はコロナ禍の影響で息が詰まりそうになる毎日を過ごしていた。
ある日、彼女が池袋の公園を訪れると、そこには同じように孤独に苛まれ、行き場をなくした者たちがいた。
血がつながっていなくても、戸籍上は同じ家族でなくても、強い絆で結ばれた「本物の家族」を作りたい――。涼風は親しくなった者たちと「こうふくろう」を立ち上げる。
しかし、いつしか想像を超えて巨大になった集団の内部では、日常的に犯罪行為が繰り返されるようになっていく。
※Amazon商品ページより抜粋しております
②読んだきっかけ
『天使のナイフ』など読書を始めた頃から読んでいる作家さんの一人、薬丸岳先生の最新刊として積まれていた作品。
デビュー20周年作で、帯を読んで、疑似家族のコミュニティを作ったら、内部で犯罪が行われていくような話で、だんだん歪んでいく感じの作品なのかなと思いつつ、カバーがふくろう以外全部ブラックということもあり、ホラー系?と思いながら手に取ってみました。
なかなか分厚い本で、これは読みごたえもありそうだなと思いながら書店で購入いたしました。
③感想・レビュー
コロナ禍で孤独を感じていたり、家族から逃げてきたりと、それぞれに心の悩みや闇を抱えている登場人物たちが、血のつながりがなくても本物の家族を求めて集まったのが「こうふくろう」。
それぞれに、家族というつながりを欲するのですが、家族というのが1つではないように、つながるこうふくろうたちもそれぞれの事情とそれぞれの家族の価値観をもっていてい、しっかりとこの「こくふくろう」という組織がリアリティがあって、引き込まれました。
そして、普段は考えたことすらない
ほんものの家族とは何か?
ということを考えながら読んでしまうし、各登場人物たちのゆがんだともいえるし、こそばゆい感じの家族観を気持ち悪いと思うのか、賛同するのか、すべては読み手の価値観次第なのかなと感じました。
私は、正直、この登場人物たちの家族観というのは気持ち悪いというか、家族ってそういうものじゃないですよね?と思いましたが、それは、私が、親や家族にある意味恵まれているからこそなんだろうなと思います。
本来、親の愛情に恵まれて育つと、おそらく本物の家族や理想の家族って考えたりすることってないんじゃないかと思いますし、そんなことすら考えたことがなかったなと思うほどには裕福にあるいは家族に恵まれてきたんだろうなと感じました。
そういう家族観を考えつつも、登場人物の境遇や価値観がそれぞれ違い、それぞれの視点で描かれるということと、1章がほとんど40ページくらいということもあり、500ページ超の本にしては読みやすくあっという間に読み終えることができたなと思いました。
ただ、これは個人的にはこうふくろうができるまでとできてから、ある登場人物の死の前後など、時系列がわかりづらいところがあって、読みながら、あれ?この話ってさっきより後の話?前の話?というくらいに混乱するところがありました。
そこが若干読みづらいなと思いましたが、それでも、本作品からは目が離せない、こうふくろうどうなっちゃうの?、というかこいつヤバくね?とどんどん闇の部分を覗きたくなる、そんな作品だなと思いました。
コロナ禍で声なき声をあげる作品だったり、コロナ禍の孤独や家族がテーマの作品は数あれど、それを利用したクライムサスペンスって意外となかったような気がするので、
今更コロナ禍を舞台にした話?
と思うよりは、こんな書き方もあるのかと感心させられた作品(謎の上から目線になっていてすみません)です。
特に、はじめは理想を掲げていたのに、気が付いたらその理想やルールは良いように使われたり、捻じ曲げられていったりして、闇がどんどん深くなっていくなと感じる作品でもありました。
④こんな方にオススメ
・家族をテーマにした作品でブラックなものを読んでみたい方
・理想が深い闇へと変貌していく様を眺めてみたい方
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