舞台の脇役だったり、舞台にも立てない観客だったり、主役じゃない人もしっかりとそれぞれの役割を果たすからこそ舞台は映える。
そんな風に吹かれて着陸したところで根を張り、しっかりと綺麗な花を咲かせるために生きている。その存在はもしかするとほとんどの人に知られることはないかもしれないけれど。
そんな、たんぽぽみたいな人たちが織りなす物語が本作です。
本作は、文章が面白く、クスッと笑いながら読める作品ですが、いろんな人に刺さるだろうと思うスパイスが所々に散りばめられています。
恐らく、読んだ方の殆どの人が自分と重ねてしまい、入り込めるんじゃないかと思います。
そんな本作で語られるのは、もしかしたらありきたりかもしれないですが、誰の目にもとどまらないかもしれない道端のたんぽぽも実は頑張って根を張って生きているし、そのたんぽぽが誰かを癒すかもしれない。
多くの人は主役にみたいな人生を送れないと勘違いしてるんじゃないか?私も含めそう、そう思っています(何なら今も思ってます)。
ただ、本作品を読んで思うのは、確かに脇役だったり、観客だったりするかもしれない私のもしくはあなたの何気ない日常の主役は私であったり、あなたです。
現に、登場人物皆が脇役みたいな方々かもしれませんが、彼ら彼女達が間違いなく、本作のヒーローであったりヒロインなんです。彼ら彼女たちからみたら平凡かもしれませんが、そんなことを思う人は恐らくこの本を読んだ方は思わないはずです。
つまり、私やあなたの普段のなんともない平凡だと思う生活は、観客側から見ると主人公やヒロインと変わらないということなんだろうなと気づきます。
そして、その平凡だと思う生活や、決して世間からは普通と思われる生活も、一生懸命生きればそれなりの花を咲かせていて、その花が集まればだれかの役に立っていたり、誰かのヒーローになっている。
この作品の最後を読んで、Mr.Childrenの『彩り』のなんてことのない作業が目の前の人の笑い顔を作ることもあるし、ドンブラザーズの雉野役の俳優の鈴木さんが舞台挨拶で言っていた、「誰かを救ったら、それはその誰かにとってあなたはヒーローなんだ」という意味もわかる気がしました。
殆どの人は歴史に名を残すこともない人です。今有名なあの人も、成功していると言われているあの人も100年後どころか10年後には忘れ去られてしまう人かもしれない。
勿論、私もほぼ間違いなく、名前も知らないまま、やがてこの世を去る人です。
しかし、今、ようやく咲きかけのたんぽぽを頑張って咲かせれば、誰かの記憶に残るかもしれない。生きるってそういうことで良いんだと思うし、この感想が誰かの目に触れて、本作品を読んで一生懸命生きれば、肩の力を抜いて気楽に生きたらええんやというのが伝わったら良いなと思いながら、本作品の感想を残したいと思います。
道端にひっそりと咲くたんぽぽのように。
※ブクログに掲載した感想を転載しております。
春なので、去年読んだたんぽぽみたいな作品の紹介です。
本を読んだり映画をみたり、ドラマを見たり、見ていると憧れてしまう主人公やヒロインたち。
私もそんな人になりたいと思わず思ってしまい、それに比べて今の私はなんて思います。
でも、脇役も俯瞰してみるから脇役なのであって、実は脇役と呼ばれる人たちやエキストラの人たちそれぞれの人生は主人公でありヒロインなんだ。
こう言ってしまうと当たり前かもしれませんが、脇役やエキストラがいてこその主人公でありヒロインだという当たり前の事実を温かく教えてくれるそんな作品です。
第三者からみて主人公やヒロインみたいな生き方じゃなくても良い。脇役でも精一杯いきれば良い。
せっかくの春なので、是非読んでみてほしい一作です。
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