魔王を倒した勇者一行。
しかし、その帰還途中で強い魔人に襲われ?殺された?
本当に勇者は魔人に殺されたのか?犯人はパーティの誰かではないのか?
勇者は平民出身で、その他のアタッカー(戦士)、僧侶、賢者(魔法使い)は全て貴族出身。
魔王を倒した勇者はその国の姫と結婚しやがては王様になるという中、誰かが勇者を殺したということも否定できない。
果たして、勇者が死んでしまった理由とは?
というお話なのですが、実は冒頭で、大体、勇者がどうなるのかがわかり、誰が勇者を殺したのかというのは最早問題ではない作品だと思います。
そういう意味では推理小説を読みたい人向けではないとは思います。
かくゆう私もタイトルが某有名作家さんの書店に置いているタイトルと似ていたので、ゴリゴリのミステリーとまでもいかなくてもファンタジー的なミステリー小説を想像していたのも事実で読んでいて、あれ?思っていたのと違うぞと思いました。
ただ、読んでいて、実は「勇者」とは何かということが書かれている作品。
私が知っている勇者はドラクエ1のロトの勇者、ドラクエⅢの勇者、ドラクエⅣ・Ⅴの天空装備ができる勇者のみです。
そして、本作品の勇者のイメージはあくまで個人的な意見ですが、ドラクエⅢの勇者がしっくりくるなと思いました。
RPGゲームの勇者や勇者ポジションの主人公と呼ばれる登場人物達は実はなりたくてなっているわけではないというものだし、ゲームで感じなかった勇者になるということがどういうことなのかということはゲームを通してはわからない。
なぜなら、ゲームをしているときは物語を追うだけだし、操作するプレイヤーに勇者や他のパーティーメンバーがダメージを受けてもその痛みはわからないです。
敵を倒せばレベルが上がって強くなるし、魔法や技だって自動的に覚えていく。
ゲームをやっているときは敵である魔王を倒しに行く。自分自身が勇者になって勇んで戦うわけです。
しかし、リアルに魔王が世界を征服しようとしている世界の住民になったとき、私はゲームのように魔王を倒しに行きたいと思うのか?
命を落とすかもしれないし、何より怖い。安全なところに居続けたい。
そう思うのが普通ではないのか?
それを想像すると、魔王討伐の勇者になりたいと思うのは相当ハードルが高いことだなと思いました。
そして、勇者の資質とは何なのか。
ドラクエⅢでも、実はそれが意図してかはわからないですがしっかりそれが反映されているなと思いました。
勇者と言えば格好良いし、世界を救う、専用装備なんて憧れですよねなんて思うのですが、戦士に力は及ばない、素早さは武闘家には及ばない、呪文は僧侶や魔法使いよりも弱い。パラメーターだけでみると器用貧乏なわけです。
じゃあ、何が取り柄なの?
その答えは本作にあります。
そして、その答えやRPGゲームをプレイしているプレイヤーの数だけそれぞれの世界があると感じた時、あなたはきっと、ドラクエⅢを再びプレイしたくなると思います。
本作の勇者の名前をつけて。
※本レビューはブクログに掲載した感想を転載しております。
華やかな勇者というイメージではないですが、これこそザ勇者だと思わせてくれた作品です。
あなたも本作品に出てくる勇者がきっと好きになる。
そんな作品だと思います。
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