【救われてんじゃねえよ】(上村裕香)感想・レビュー

①あらすじ

 主人公の沙智は、難病の母を介護しながら高校に通う17歳。

 母の排泄介助をしていると言ったら、担任の先生におおげさなくらい同情された。

 「わたしは不幸自慢スカウターでいえば結構戦闘力高めなんだと思う」。

 そんな彼女に舞い降りたのは、くだらない奇跡だった。

※Amazon商品ページより抜粋しております。

②読んだきっかけ

 女による女のためのR-18文学賞受賞作品と聞いて。

 『成瀬は天下をとりにいく』以来、文学賞を読んでいる私。

 情報源は今年も『成瀬は天下をとりにいく』の作者である宮島先生なわけなのですが、今年もタイトルと装丁みて読もうと思いました。

 店頭に並べられていて、はじめに手に取った感想は、薄っ!ページ、少ない!!でしたが、そんなの関係ねぇ~精神で手にとってみました。

 正直、手に持ったときの感触は、『ハンチバック』(市川沙央)くらいの感じで、ここ最近で手に取った本の中では最薄だと自信を持っております。

③感想・レビュー

 読んだきっかけでも書いたように、総ページ数は120ページ程度。

 正直、ページと価格でいくといわゆるタイパどうよ?となりそうですが、中身もなかなかに濃い。

 初めて、京都で御抹茶とお菓子のセットをいただいたときのお抹茶くらい濃い(わからん)。

 まず、ヒロイン沙智は高校生で、両親と暮らす3人家族なのですが、母親が難病のため母親を介助しながら過ごす日々からスタートする本作品。

 母親は甘えたいのか構ってほしいのか、娘を頼ってくるし、介助しないとおしっこやのうんちなどを漏らしてやりたい放題。

 父親は父親で母親と夜の行為はお盛んなのに介助など母親の世話は一切しない。

 いわゆる、ヤングケアラーな日々を過ごすのがヒロイン沙智だというわけです。

 そんな沙智ですが、読後に思うのは、彼女をヤングケアラーと呼んでも良いのか?ということ。

 沙智と両親は間違いなく共依存状態であるということは確かなのですが…

 そんな本作品、まず読んでいて湧きた感情は、沙智の両親たちに対する怒りや気持ち悪さでした。

 暮らしが良いわけでもないとはいえ、ここまで親というのは身勝手なものなのか。

 そんな、感情を抱きつつ、介助をすることから離れられないヒロインの沙智にすらイライラする。

 ここまでは、おそらく、私がこういう状況になったことがほぼない幸せな環境にいたから、共感よりもイライラ来るんだろうなぁと思うだけの作品で終わっていたんだろうなと思います。

 しかし、この毒親ともいえる沙智の両親のそのダメ親っぷりがたまにクスッとさせたり、たまに沙智を守っているようにめえるような行動をとったりと、この人たち、実はちょっと面白くて良い人かも?と思ったり、沙智の感性を面白く感じたりします。

 そして、その両親たちに慣れたり、沙智の感性を面白く思っていると、今度は沙智のために世話を焼いてくれている先生などいわゆるまともだと思われることをやっているはずの人側も何かムカつく感じがするという。

 おそらく、このムカつく感じは、まともにみえるはずの登場人物たちが沙智のために発言したり、行動していないからではないかと思っています。

 登場人物たち全員にムカついたり気持ち悪く感じるのは、そう私も他人のためとか言いながら、実は自分のことしか考えていないことが多いからということに気付きました。

 ある意味、毒親っぷりが自由で羨ましくも感じます。子供のことを考えずに、ほぼ自分のことだけしか考えていないように見える親のことが。

 なかなか難しい問題もはらんでいて、迂闊なことを書けないなと正直思うレビューになっていますが、読後は確かに

 勝手に「救われてるんじゃねえよ」

 と、心の中で思てしまった本作品。

 読んでいて怒りや気持ち悪さを感じたならば、その怒りや気持ち悪さはどこに向かうものなのか。

 ここまで書いてみても、この自分が感じた怒りや気持ち悪さの答えは今も答えがでていない…

④こんな方にオススメ

・どう表現してよいかわからない怒りや気持ち悪さを体験してみたい方
・女による女のためのR-18文学賞作品に興味のある方

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