【受け手のいない祈り】(朝比奈秋)の感想・レビュー

①あらすじ

 感染症の拡大を背景に周囲の病院の救急態勢が崩壊する中、青年医師・公河が働く病院は「誰の命も見捨てない」を院是に患者を受け入れ続ける。
 長時間の連続勤務による極度の疲労で、死と狂気が常に隣り合わせの日々。我々の命だけは見捨てられるのか

※Amazon商品ページより抜粋しております。

②読んだきっかけ

 XのTLで『禁忌の子』の著者、山口未桜先生が朝比奈秋先生と対談しただったかな?でポストされていて、命を救うために命を捧げるというようなフレーズが書かれていて、読んでみたいとなって、書店で購入いたしました。

 相変わらず、本を買う時は面白そうという謎の好奇心だけで手を出すという単純野郎です(笑)

③感想・レビュー

 あらすじにもあるように、かなりブラックな救急病院の医師が主人公で、手術などのシーンも盛りだくさん。生理的に気持ち悪い表現や、作者が医師ということもあり、内臓の表現、メスを入れて腹を切るシーンなど生々しく想像できてしまい、苦手な人には辛いかもしれない。

 私も、病院が舞台で手術のシーンをみるだけで、気持ち悪いなと感じてしまうタイプで、本作品を読みながらお酒を飲んで紛らわしたりして読んでました。

 なお、読了直後はランチで豚バラ丼を食べた模様(いらん情報)ついでに、ホルモンとビールでいきたいなととても手術シーンを想像した後とは思えないようなことを想像しましたが、いろんな意味でグロ注意です。

 テレビ等で救急で働く医師達や小児科の現場とかをドキュメントで放送されたりして見ていると、お医者さんって大変だなぁとか、お医者さんって頭良いのに、患者さんを救うのにここまでやるんだなぁとか感じてしまう部分あると思います。

 本作品の医師達も、この感じ方でほぼ間違いないとは思います。

 ただ、読んでいて、いろいろ気持ち悪い部分もありつつも、究極の極限状態の救急病院で

 医師はなぜ患者を見捨てずに手術をするのだろうか?

 医師としての義務感や倫理観なのか、その病院に属している従業員だから仕方ないのか。

 極限状態で働く医師。寝たいし、できれば救急は受けたくない、なんなら受け入れたくても受け入れるところがない。それでも、最後は断れず搬送された患者たちの面倒をみる。

 なぜなのか?ですよね。

 私の中ではブラック職場で働く労働者と同じで、仕事だからやらないといけないという洗脳にも近い何かでやり遂げているのではないか?

 そんなことを感じてしまいます。

 そして、フィクションなのですが、救急で大変なところは本当にこうなんじゃないかな?と思うほどにリアルだなと感じました。

 ただ、ドキュメンタリーみたいな話ではなく、どこかファンタジーというか現実味がない現実が描かれているなと感じる本作品。

 読了直後くらいに、

 なんか、こういう話読んだことあるなぁ?

 とモヤッとしていたところ、ネットでたまたま書評を読んで気づく。

 マジックリアリズムという単語に。

 そう、去年読んだ『百年の孤独』(ガルシア=マルケス)を読んでる時の感覚と同じだということに。

 ということは、架空の病院で起きている出来事と思ったら良いのか?でも、なぜかリアルに感じる。そう、マコンド村が存在すると錯覚しながら読んでいた『百年の孤独』のように。

 病気やけがした時の頼り手であるお医者さんというのは、いわば我々の(命を救ってほしい、助けてほしいという)祈りの受け手であるなと思います。

 じゃあ、タイトルの通り医師の祈りの受け手は?そもそも、医師の祈りってなんだろう。

 そんなことを思いながら、マジックリアリズムな世界に迷い込みつつ医師とは何かを考えてしまう

 そんな作品だと思いました。 

④こんな人にオススメ

・生々しい手術の想像をしながらホルモン食べれるぜな方
・『百年の孤独』大好きですな方

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