本屋大賞2023年の2位の得票を集めた『ラブカは静かに弓をもつ』の作者が描くSNSの炎上のエネルギーと鮮度の短さを描いた作品。
SNSで投稿するのは注目を浴びたいという気持ちなのか、ただの自己表現なのか?
また、SNSの炎上をコントロールすることは可能なのだろうか。
SNSの瞬発的ともいえる闇のエネルギーを描いた作品。
読中、読後の嫌悪感を抱く対象は登場人物ではなく実は読者であるあなたに向けられているのかもしれない。
①あらすじ
「検索すればすぐに出てくるよ。赤ん坊を抱いたまま旦那の上司を刺しに行った女。なんか怪獣みたいな名前でさ」
ワンオペ育児で追い詰められた母親が夫の上司を刺傷した。
彼女は赤ん坊を抱っこ紐で帯同したまま犯行に及んだという。
事件を取り上げたWEB記事をきっかけに、イオラという犯人の特徴的な名前や事件の異常さが注目を集め、SNS上ではイオラ擁護派と否定派の論争が過熱。
記事の担当者・岩永清志郎は、大きな反響に満足しながら、盛り上がりが続くよう新たなネタを探して奔走するが……。
※Amazonの商品ページより引用しております。
②読んだきっかけ
『ラブカは静かに弓をもつ』の作者先生の新作ということで書店で見つけて。
実は表紙、タイトルを見たときはそこまで読みたい欲みたいなものがなかったのですが、『サイン本』と書いていて、作者的にも気になるし、欲しいなら買っておこうということで購入。
2022年に読んだラブカのイメージでも作者の作品のイメージも強かったというのも決め手でした。
タイトルを読んで、ドラクエの魔法みたいなものと地上の光とあったので、化学系?宇宙のサイエンス系?のエンタメかな?と思いながら…
③感想・レビュー
まず、はじめにネタバレみたいなことを書きますが、本作品はSNSの炎上中のエネルギーの強さとか、鮮度が一瞬しか保てないということや、SNSで投稿発信する側と発信された燃料をつかって炎上させたり、その炎上をみてどう思うのかという受け手側を描いた作品です。
話題の「鮮度」というのが特にキーワードになっているというのもありますが、このタイトルに出てくる「イオラ」について、ほとんど言及されません。
私は読んでいて、この「イオラ」の話になって、本題きたぁー!!くらいにワクワクしたのですが、ネットでの話題の「鮮度」同様、ほぼ一瞬で話題から消えて、えっ!?となりました(笑)
というわけで、本作品はこの「イオラ」なるものの深堀を期待して読んでしまうと、肩透かしを食らいます。
ただし、この「イオラ」、話題からすぐに消えるのですが、登場人物に、そして読者にいろんな作用を働かせていったりとゾンビや呪いのごとく生き続けていきます。
登場人物たちもなかなかに嫌な気持ちにさせてくれる登場人物たちで、ラブカのようにどこか爽やかな感じの作品を期待すると全然違うベクトルなので戸惑うでもあります。
しかし、その嫌な登場人物たちを通して、自分はじゃあSNSでどんな投稿をしているだろうか?と考えさせられます。
私は普段は読書アカウントとして、読了本を紹介することがメインですが、立ち飲み屋さんでビールを飲んでる時に投稿したり、政治や経済のコメンテーターよろしくお気持ちを表明したり、凄惨な事件が起きるとメンタリストの方ですか?探偵の方ですか?みたいな投稿をしたりすることもありました。
それらのいろいろな投稿はなんのためにしているのか?
自分を認めてほしい、バズるとイイネや表示数が戦闘力みたいな感じがして高揚感を得ることができるなどなど思いつくことはいろいろあるし、スマホを手放せない=SNSを手放せないという感じに近い現象も体験しているので、嫌な登場人物たちの行動を馬鹿にできないなと思いました。
また、SNSやネットでの意見にソースやエビデンスもないことが多いのに鵜呑みにして、実生活に影響を及ぼすまでにも実際なっていると思うので、そういう意味でも本作品はSNSの反響だったり、投稿者の視点という点についてもリアルだなと思いました。
とはいえ、リアルなSNS社会を描きすぎているというのもあって、
冒頭で書いた「イオラ」は本作品の軸なだけにもっと深堀してもよかったんじゃないのか?
その想いは残ってしまったし、読後もそこはもやもやしているポイントではあります。
ただ、読中と読後の何か気持ち登場人物たちの感情やストーリーも説明不足感があっていまいち乗り切れなったなと感じた本作品ですが、読後にいろいろと考えるとジワジワと考えさせられる後からくるタイプの作品だなと思いました。
④こんな方にオススメ
・リアルなSNSの裏側に興味のある方
・内面的に嫌な登場人物たちを眺めることが好きな方
・説明なしである事象の意味を考えることが好きな方
特に、本作品は起きていることや登場人物たちの内面描写から考えることが多いため、考えることが好きな人にオススメです。
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