①あらすじ
著名な劇作家・野上が主宰する劇団の新作公演初日まで、残り3週間。
晴れてヒロインに選ばれた元国民的子役のアイドル・中野ももは、野上の厳しい指導に応えることができず、徐々に追い詰められていた。
長年売れず、端役を手にすることしかできなかったとある中年の女優は、中野ももが憔悴していく様子を気に掛ける。
そして、やってきた公演初日。
幕が上がった瞬間、二人の人生は大きく変わる!
※Amazonの商品レビューより引用しております。
②読んだきっかけ
春ごろにラジオで紹介されていた本作品。
聞いたときに読みたいなと思っていたのですが、車の運転中だったためメモもとれず、番組名も思い出せず、ストーリーだけ覚えて約半年が経過したころ、偶然に書店の誰かのセレクトということでオススメとして積まれて帯の感じと、作者も俳優というのを思い出して、あっ、この作品だ!となった作品。
年内に無事に出会えてよかったです(笑)
出会えた以上は、これが最後のチャンスであり、ここが私にとっての本作品の読み頃なのだろうと思って、購入いたしました。
③感想・レビュー
第一章、第二章は、あらすじにあるとある中年女優のシンデレラストーリー?と思うくらいに、どこか陰鬱なところもありつつ、でも中年女優の努力が報われたんだなとか、スポットライトが当たってよかったなと思う作品。
これがカット・インしてきた側の話なわけですが、当然カット・アウトしてしまう側も描かれていて、芸能界で生き残ること、芸能界を走り抜けることの大変さが描かれているなと思いました。
書かれている内容も、中年女優がたまたまの運だけでスポットライトを浴びたのではなくて、その運を掴んでものにするだけの努力があったこともわかるし、一方で、カットアウトしてしまう側のアイドルのガムシャラになんでもやれば良いというわけでもなく、無理すると人は壊れるということも伝わってくる作品だなと思いました。
芸能界だけでいえば、本作品を読んで、長い間、次から次へ仕事をこなしていく人気俳優など芸能界で最前線を走り続ける人ってまさにバケモノだなと感じました。
一方で、
この話って、本当に芸能界や演劇だけの話なのか?
とも思いました。
サラリーマンであれ、個人事業主であれ、初めの忙しくないときややる気に満ち溢れている時って、仕事が苦になることってあまりないですよね?
ところが、仕事が軌道に乗ってくると、やることも多いし、求められることも多い。週休2日を毎週キープできればよいと思いますが、おそらくどこかで歯車が狂ったりすると、休日出勤、残業は常態化するし、休まる暇もなく、怒られたり失敗したりが積もってただ疲弊していくだけ。
少しまとまって休んだって落ち着かないし、まさに本作品で表現されるように
ガソリンが切れた状態でそれでも無理やり走り続ける
そんな状態になるのかなと思います。
気が付けば、仕事に行く朝に体が重くなったり、仕事も手につかない状態で心に体がついてこないという状況になっている人、結構いるんじゃないかな?と。
そうやって読むと、演劇や芸能界だけの話じゃないなと思いました。
そういうキャパオーバーの状況に辿り着けるか、辿り着いたらそれを乗り越えることができるのか。
カットイン、カットアウトの境目って多分そういうところに出てくるのだろうなと思いました。
ただ、カットアウトしたから人生が終わるわけではない。
カットアウトしても再びカットインできるかは、全てあなた次第だと言われているように感じた作品です。
④こんな方にオススメ
・芸能界のシンデレラストーリーを読んでみたい方
・仕事に疲れたな、うまくいかないなと感じている方
↓『カット・イン/カット・アウト』はこちらから購入可能です。
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⑤本作の次に読む本としてオススメしたい作品
【スピノザの診察室】(夏川草介)
京都のとある病院の町医者の診療を描いた作品。
内視鏡手術の名医中の名医があるきっかけで大学病院をやめ、京都の病院に勤務することに。
その病院で行われていることは、患者とひとりひとり向き合うこと。
医療にできることは病気を治すことだけではない。
医療を通じて語られる哲学。本当の「幸せ」とは何か?
『カット・イン/カット・アウト』みたいに演劇や舞台の話とは全然違う話なのですが、仕事のことで辛い、しんどい、仕事を惰性でやっているなと読んで感じた方に、『スピノザの診察室』に出てくる医師達の医療(仕事)の向き合い方や考え方などが染みるのではないかと思い、オススメいたします。
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