イチキュッパで生まれたヒロイン磯原めだか(22)は就活に失敗し、仕事を辞めて実家に帰ることに。
落ち着く場所はバスタブだったことから、バスタブで寝泊まりする生活をする。
そんなめだかのバスタブ生活を描いた作品。
なかなかコミカルで毒のあるめだかの一人称で描かれる本作品は設定もありえない病気?(漬物石が定期的にお腹の中に移動する病気?)とかあって、どこかファンタジックな描写が多い印象です。
また、生きてはいるものの、日々忙しくて夢を追えないとかそういうことじゃなくて、何をしてよいかわからない系のダラダラと生きている感じのヒロインが軸となっているのですが、夢も希望もない、別に興味のあることなんてない、無意味に生きている感覚って、私もそうだし、そういうことに悩みながら、あるいはなんとも思えない自分に嫌気をさしながら生きているなんていう人結構多いのではないかと思いますし、意外とこのめだかというヒロインは刺さりやすいんじゃないかなと思いました。ある意味、『人間失格』の主人公っぽいですよね。
私ももしかしたら同じかもしれないという共感が。
そんな本作品からは「無意味に生きることの意味」が込められているよう気がしました。
毎日忙しい人もそうでない人も、仕事にやる気を見出している人も悩んでいる人も思うことがあるかもしれない、「今、私のやっていることは意味は?」、「やりたいこともなく、ただ毎日を生きているだけで人と言えるのか?」とか、何かの壁にぶつかればふと思うことだってあるんじゃないかと。
でも、実は子供の頃に描いていた大人になれなくても、自分が別にやりたくてやっていることじゃなくても、何かをやれば、それが誰かに影響を与えて感謝されることもある。結局、辛くても幸せでも、なんとなくでも生きていることに意味があるんだという希望のあるお話だなと思いました。
そして、実は何もない平凡な生活を暴力的に脅かしてくるのは、普段なんの関わりのないはずのアカの他人、通称「へのへのもへじ」なんだなとも思いました。
ほんと、会ったこともない奴にこそ暴力的な発言されるとムカつくっていうの分かる気がしましたとも。
ポケベルとか家の電話とかでしか直接会う以外に会話のコミニュケーションができなかった時代に比べて、今は圧倒的にコミニュケーションがとれる時代になったはずなのに、なぜか今の方がコミュニケーションや人間関係に手こずる不思議。
そういう全くアカの他人なればなるほどに苦しめられるモヤモヤ感も感じつつ、最後は家族、いや、母は偉大だなと感じた作品です。
いつか大事な人はいなくなるけれど、それでもあなたの日常は続いていく、いつか闇に帰るその日まで。
※ブクログに掲載した感想を転載しております。
今、私が注目している四季先生の去年の夏に発売された作品。
バスタブで生活をするヒロインめだかとなぜか自分の生活と重ねてしまう不思議。
毎日生きるのに必死なのに、その世界は妙に生きづらい。生きづらいけれど、本作のめだかに自分を重ねると、ああ明日も頑張ろうかなと思える不思議な作品でした。
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