「あのときああしておけばなぁ」
誰でも1度どころか何度もやる後悔。
今に満足できず、辛いなと愚痴こぼしたり、旦那、嫁の不満で、あのときに別の人と付き合っていれば…
悩み、不満は尽きない今の現実。
じゃあ、あの時、別の選択をしていたら?
そんな選択肢があるなかで、過去に選ばなかった選択を選んだ並行世界にたどり着いてしまうサラリーマンのお話です。
世界は2021年でコロナ禍の世界でイベント関係の会社に勤務するサラリーマン(40)。
ある日、仕事がしんどいなぁと思い立ち通勤中に会社に行くルートと反対のルートの急行列車に乗った。
その終点で、ふと思い立って山登りをして戻ってきたらコロナのない並行世界だった。
これが導入部分になるのですが、並行世界は時事ネタ満載で、確かに狂牛病がおさまってない世界だったらあり得た世界だろうなと思ったり、思考警察みたいなの実際にネットにウヨウヨしてるよなぁと思うなど、並行世界の情勢がしっかりできていて面白いです。
また、作者らしいコミカルな文章で、はじめはちょっと鬱陶しいなぁと思っていたところもありましたが、並行世界に主人公が行ってからは特に気にならず、むしろ楽しく読むスパイスとなりました。
私の中で本作から読み取ったことは「過去にああしておけば良かったと思う選択をすれば、今は本当に満足のいくものになっているのだろうか?」という問いがあるなと思いました。
私も過去に夢があり、その夢を追いかけ、夢破れて、その夢を諦めて今を生きている身。
もしかしたら、その夢を叶えた並行世界があるかもしれませんし、もともと夢を早い段階から諦めた世界もあるかもしれません。
偶然であれ必然であれ、私自身が何らかの選択を日々重ねた結果、奇跡的に今を生きている自分自身があって、それと同時に私以外のたくさんの人々の選択により、今の社会が形成されている。
そして、こんなことを考えながら本作を読むと思うのは、
「過去にああしておけば、今を満足できたのか?」
結局、人間は満足しない生き物なのではないか?
そんなことを考えながら読んだ作品です。
並行世界の旅をする主人公を見ながら、自分自身の今と向き合う作品なんだなと思った作品。
今の自分や取り巻く社会に不満はあるけれど、それでもこの作品を読んで今が良いなと思えるのならば、きっとそれを幸せと呼ぶんだろうなと思いました。
※ブクログに掲載した感想を転載しております
コロナ禍で大混乱していた時期に日経新聞で連載されていた作品。
本作を読んでいると、狂牛病なども蔓延していた世界があったかもしれないし、過去にあれをやっておけば良かった、これはやらないほうが良かったと過去の後悔を思い出したりもします。
でも、読んでいて思うかもしれない。
今の生活に不満があるかもしれないけれど、今の生活が1番良いかもしれないと。
読後に、そう思えるならば、それが幸せだと思った作品。
少し悪ふざけな部分もありつつも、本作品を読み終わった後にどんな気持ちを抱くのかが最大ポイントだと思います。
そして、願わくば、読後のあなたが今が幸せだと思えるよう願ってます。
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