【月夜行路】 レビュー

 44歳の専業主婦の涼子は、関係が冷え切った夫の浮気を疑っていた。

 涼子の誕生日の前日の夜、夫は浮気相手と思わしき相手から連絡があり、真夜中に仕事といって出かけることに。

 あまりにもムカついた涼子はその日、勢いで、夫が向かったと思われる、夫の浮気相手のクラブのホステスの店へ向かう。

 しかし、なぜか、その同じビルに入っていたオカマバーに入ってしまい、そこでオカマバーのママ、ルナと出会う。

 話しているうちに、オカマバーのママの鋭い洞察力とコミュ力でヒロイン涼子は打ち解け、涼子は大学時代に付き合っていた男性について語りだす。

 そして、涼子は妙にその付き合っていた男性に会いたくなり、勢いのままに大阪へ。その日偶然出会ったオカマバーのママ、ルナと伴に。

 本作品はヒロイン涼子とママが大阪で文学の聖地巡礼をしつつ事件に巻き込まれながら、涼子の元彼を探すミステリーです。

 本作品は、探偵役のオカマバーのママの文学の知識と洞察力がコ◯ンばりに凄いのですが、言葉も染みるくらい良いことを言います。

 また、私、大阪に住んでいながら、実は数々の文豪の聖地が大阪にあるとは知らなかったし、出てくる作品、読んだことないんですが、それは意識して行ってみたいなぁとか、ちょっと難しそうだけど読んでみようかなと思うくらい、大阪という場所と文学作品への愛を感じます。

 ミステリーも大掛かりなことはないですが、私が好きなタイプの行き当たりばったり感がなく、文学作品を使って推理してるのも面白かったです。

 そして、本作品は私に、

 「もしかしたら、私は誰かの夢なのかもしれない」

 ということを気が付かせてくれた作品になりました。

 私が今の生活に満足してるのか、夢にも破れ夢を実現した人が羨ましいと思うこと、本当によくあります。

 こんなこと、他の作品の感想に何度書いたかわからないくらい自分の今の状況をってどうなんだろう?と思う作品は数あれど、実は、私はもしかすると誰かから見たら、夢とまで言われるくらい羨ましい生き方をしているかもしれないなと思う作品は初めてかもしれません。

 実はどんなに出世したり有名な人も、いわゆる地位も名誉も気にしなくて良い生活に憧れているかもしれないし、憧れの芸能人と結婚した人も昔の恋人と結婚した人を羨ましく思っているかもしれない。

 生きてる以上はどんなにその生活を気に入っていなくても、その生活は誰かに羨ましがられる夢や理想になっているかもしれないということに気付かされた作品です。

 そして、その羨ましい理想のあの人が、私では絶対に手にすることができない幸せな生活が、いつまでも夢や理想のままであってほしいと願えれば良いなと思いました。

 いつまで経っても忘れられない初恋のあの人が、今もどこかで幸せであってほしいと願うように。

※本レビューはブクログに投稿した感想を転載しております。

 去年の夏頃に出会った本作品。

 暗黒女子を読んだことがあるので、ダーク(イヤミス)なイメージの強い秋吉先生ですが、本作品は白アキヨシと言われるように、本当に素敵なお話です。

 大阪の文学ゆかりの地を巡るというのも面白かったのですが、ルナママの言葉が染みます。

 去年の私のイチオシ作品です。



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